2018年01月09日07時01分掲載
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コラム
15年目の日刊ベリタ インターネット新聞の過去、現在、未来
僕が日刊ベリタに関わるようになったのは2009年の夏のことで、その秋民主党政権が誕生した。今から見ると、不吉な未来の種子はこの時すでに撒かれていたことになるが、その当時に立ち返ってみると、新しいジャーナリズムの潮流が生まれつつある時でもあった。それは民主党政権が記者クラブを廃して、フリージャーナリストにも記者会見の門戸を開こうとしていたことや、TVに代わるインターネットの映像メディアが息吹を上げていたことなどである。
では本紙、日刊ベリタはどうだったかと言えば、独立メディアでは最初のインターネット新聞として2003年に生まれているが、創業時の執筆者のほとんどは現在、執筆していない。たかだか15年でそれだけの人材の変化は既存の大手メディアではあり得ないことである。朝日や読売などの大新聞で15年で人材がほとんど一新されているなら、それは驚くべき変化であろう。
日刊ベリタで何が起きたかと言えば、そもそも財政基盤が脆弱で収入が乏しいが故に執筆者に収入がなく、また編集者も雇用する余裕がなかった、ということが一番大きな要因だろう。結局、少ない有料会員のおかげでサイトを運営できたとしても、無料で原稿を執筆する書き手にとって数百人の有料会員しか原稿が読めないのなら、継続的に寄稿するインセンティブにはなりえない。そのことがあって、最近、日刊ベリタは基本的に無料で読める記事が大半になったのだが、そのことが原因で有料会員が減る、ということにもなった。お金を払っている会員の方にしてみれば当然と言えば当然だと思う。だから会員を辞められた方に恨みはない。
それ以外にも要因はある。1つは日刊ベリタの編集者や創業者がすでに既存の大メディアのシニアエディターみたいだった方が多く、日刊ベリタの創刊の時点で60代くらいに至っていたことだ。若いメディアだったのだが、創ったのは年配の人たちだったのである。それから15年が経ったとしたら、もし創刊時に60歳だったとしたら現在は75歳なのである。その年齢で、報酬ゼロで現場主義を貫くのは簡単ではないだろう。交通費や経費は年金で工面するしかないからだ。鬼籍に入った人もいる。さらに、若い書き手が創刊時に少なからず参加していたようだが、おそらく要因の1つに収入にはなりえない、という現実があり、自分でブログやサイトを立ち上げるか、あるいは別のメディアに寄稿するか、あるいは短期的に記事を書き送っても長期的に継続できないか、など様々な理由で中断してしまったのであろう。そして、もちろん人によって様々な要因があり、中には編集姿勢に疑問を持ったり、人間関係のもつれなどもあったのかもしれないが、いずれにしても、多くの人が継続しなかった、ということは事実なのである。
日刊ベリタの創業者の一人は韓国のある新興の市民ネットメディアに刺激を受けていたが、その媒体は自らが支援して誕生させた廬武鉉政権の衰退後につぶれていた(注:筆者の誤りで、ダメージは受けたが実際には現在も存続している)。そのメディアが未だ勢いのある時の取材記事は読んだことがあるが、つぶれた後の検証レポートは読んだことがない。しかし、今後の発展のためには成功した理由などよりも失敗した理由こそ書く必要があるのではなかろうか。時代を変革するのは夢を諦めない粘りであり、それは何十年も継続することから生まれるのだと思う。他のインターネット媒体はともかく、日刊ベリタにおいては市民メディアとかネットメディアの創業時の熱い情熱は雲散霧消したかのようである。大メディアに足場を築いたら、日刊ベリタは卒業、という発想だったとしたら、市民メディアとは名ばかりで、プロを目指す市民の予備校くらいの価値しかないことにもなりかねない。市民が報道に参加する、という事で言えばまだまだ課題が大きいし、市民の力を十分に生かし切っていないと思う。
自分の反省も含めて言えば日刊ベリタは現場主義をどう構築するか、ということが大きな課題としてあると思う。他のメディアの記事の批判も決して無意味ではないと思うが、それだけでは新聞としてのオリジナリティを打ち出せないのではなかろうか。新聞批評と同時に、自らの目と足で取材した記事も一定の割合必要ではなかろうかと思うのだ。そのためにはギャラは出ないとしても交通費だけでも何とか工面できないか、ということがある。海外出張費の何十万円みたいな話をしているのではない。都心の往復の電車賃の数百円程度のことなのだ。それは今後の課題であり、日刊ベリタの財源から拠出するのが不可能ならば、個人的に寄付を募るほかないだろう。課題と言えばたくさんありすぎて、どこから手をつけたらいいかわからない。しかし、大切なことは志を持つ人が主体性の中で続ける事が基本だということだ。反権力と主体性の重視こそ日刊ベリタの良さだと思っている。
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