2018年01月19日20時25分掲載
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大不況の最中に撮影された炭鉱労働者 ヨ―リス・イヴェンス監督(共同)「ボリナージュの悲惨」”Misère au Borinage” (Joris Ivens- Henri Storck 1933)
オランダ出身のドキュメンタリー映画監督のヨ―リス・イヴェンス(1898- 1989)には初期の詩的なともいえる「雨」といった短編映画もあるが、大不況の最中に撮影された「ボリナージュの悲惨」のような社会派の映画もある。むしろ、イヴェンスの本領がこの方面であることがわかってくる。
30分ほどの短編映画「ボリナージュの悲惨」(Misere au Borinage) はベルギー南西部の炭鉱街の労働者たちが不況の中で厳しい生活を強いられている光景を比較的シンプルに映し出す。労働者たちは総需要の低迷で賃下げを繰り返され、さらには失業者が増え、家賃が払えなくなった労働者から町を去っていく。その姿は悲しい。映画の最後の方で労働者のデモ行進も映し出されるが、カール・マルクス(1818 - 1883)の没後50周年だったらしく、先頭を歩く労働者はマルクスの額縁を手にしている。
今日の日本では政府や主要紙が経済は活況にあると盛んに宣伝しているが、実際には実質賃金も消費も下落している。そのこと自体が恐るべきことではなかろうか。そうした誤った報道が選挙結果を誘導し続けてきた。そして、この不況と言うものを正面から直視したドキュメンタリー映画は日本で作られたのだろうか。そう思って「ボリナージュ」を見ると、初期の欧州のドキュメンタリー映画のパイオニアたちは比較的ストレートに社会問題に取り組んでいたことがわかる。
■「ボリナージュの悲惨」(Misere au Borinage)
https://www.youtube.com/watch?v=v1feCFWK_wI
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