2018年01月25日17時22分掲載
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リーダーズ・ダイジェスト誌の100単語でつづるノンフィクション物語のコンテスト
アメリカのリーダーズ・ダイジェスト誌が英語100単語以内で実話を募集してコンテストを行ったという。応募作品は7000もに及んだ。その中から選ばれた文章をウェブサイトで公表している。1位に選ばれた話と言うのはサウスカロライナ州のミシェルさんの思い出。
https://www.rd.com/true-stories/inspiring/100-word-story-winners/
以下はあらすじ。
ミシェルさんは昔、ドライブ中に「誰が最初に車上のメンバーの中の誰かを『最も愛している』と言えるか」という競技をよく遊びでやっていた。お父さんっ子だったミシェルさんはいつもお父さんを指名していた。その度にお父さんは「私も・・・いやちょっと待て」と答えるのが常だった。その後、父はミシェルさんの50歳の誕生日の前日に亡くなった。母親が「お父さん」から預かったものがあるとミシェルさんに見せたのは美しい金時計だった。「私はあなたを一番愛しています」と彫り込まれていた。5年前にお父さんはその時計を買ったのだそうだ。
100語という限られた語数で1つの物語をつづるためには話で一番際立たせたい点がどこにあるのかを書く人が意識していなくてはならない。あれもこれも盛り込めないから、1点に収斂するしかない。ミシェルさんの話は父の娘への愛というものの永遠性にあるように読めた。O・ヘンリの小説のように40年近い歳月を経て、金時計にその言葉が刻まれていた、という多少芝居がかった話だが、実話だったとしてもありえない話ではないだろう。つまり、そうだとしたら文章というだけでなく、そうした現実の父親の振舞いが鍵だったとも言える。
上の話はある意味でハッピーエンディングと言えるだろう。次の話もハッピーエンディングだろうけれど、哀しみが潜んでいる。カリフォルニアのエドナさんという人の寄稿(4位)。
https://www.rd.com/true-stories/inspiring/100-word-story-winners/20/
以下はあらすじ。
息子が心臓手術を受けるというのでその前日に会いに行ったエドナさん。息子は「手術してもダメだと思う」と打ち明けた。お母さんを悲しませたことを謝罪して、さよならを告げた。息子は「自分には多くの友達もいないから、葬儀は少ない人しか来てくれないだろう」とも語った。息子は刑務所で亡くなった。しかし、エドナさんがFacebookで息子の死を告知したところ、葬儀には〜息子の心配をよそに〜多くの友達が集まってくれた。
わずか100語なのに、クリアな映像が浮かんでくる。犯罪を犯して刑務所にいた息子だったが、息子の心配をよそに、彼の死を悼んでくれる友達が何人もいたことが一番伝えたい点であり、それを綴ったのが子供を世に送り出した母親だったことが胸を打つ。
わすか100単語だけれども、言葉の丁寧な組み立てによって単なる喜怒哀楽のどれか1つだけではない、複数の感情がブレンドされて微妙な味わいを奏でているように思えた。喜びの中に哀しみが込められているように。
■私はなぜ刑務所の民営化と闘ってきたか 元受刑囚で「刑務所法律ニュース」のジャーナリストに聞く Interview : Alex Friedmann , Managing Editor of "Prison Legal News."
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