2018年02月02日22時10分掲載  無料記事
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核・原子力

【たんぽぽ舎発】脱原発の社会を目指して (上) 原発の電気は買いたくない−電力自由化と消費者の責任− 槌田 劭

 理不尽の極みである。関西電力は脱原発の世論を無視し、高浜原発の再稼働を強行した。福島の事故に今もなお多くの方々が苦しんでいる現実に目をつむり、事故の避難対策も未確立のままである。常識では考えられぬ無謀であり、無責任である。この理不尽とどう対応するのか、その背景を考え、脱原発への道をさぐりたい。 
 
◆顧客離れにうろたえる関西電力 
 
 このような理不尽が強行されるのは、関電の原発依存の経営が深刻な窮地に追い込まれているからである。進退が窮まって、智恵のない経営方針のままに暴走せざるを得なかったのであろう。この暴走は重大事故の危険を一層大きくするだけでなく、企業経営の破綻を加速するだろう。 
 
 8月末に、関電から一通の封書を受けとった。『以前に、関西電力とご契約いただいていたお客さまへのおトクなお知らせ』と題する書類が入っていた。内容を読んで、加速する顧客離れに、慌てふためき、うろたえている状況が読みとれた。 
 電力自由化されたのは2016年の4月である。一社地域独占で、消費者は関電から電気を買うしか、自由がなかった状態から解放され、新しい電力会社から購入することができるようになったのである。以来、関電離れが目立つ。 
 
 すでに、2017年11月末現在で120万件の契約変更が起こっている。このまま進めば、顧客の1割、125万軒は年内に離脱するのではないだろうか。1割もお客さんが減っては一般企業なら存亡の危機である。離脱する顧客を取り戻すことを真剣に考えるのも当然である。その手立てが、今回の封書である。100万通82円の郵送料でも1億円の出費となるのだから、危機感の強さが浮かび上がる。効果はどの程度なのだろうか。注目されるところである。 
 
 『おトクなお知らせ』は電気料金の値下げの通知に始まって、関電ガスとのセット契約による「ダブルで割引に!」というものである。大阪ガスを露骨に意識して、価格比較も行っているが、注意深く読むと資料処理は誠実正確とは言いがたい。A4の4頁の文書の後半2頁だけでも、「おトク」という言葉が40回以上も登場するようでは眉唾ものとの印象を強めてしまう。自分と同様に、目先だけの金銭利害の損得打算だけで消費者も動くと思っているのなら、消費者を馬鹿にしている。 
 
◆高い電気料金と放漫経営のツケ 
 
 原発依存の放漫経営のツケが今、回ってきたのだ。原発推進の政治となれ合って、電力業界に独占的営業をしてきた。電気料金も経営支出の3%が純利益と認めて決める総括原価方式によって、政治的に守られてきた。支出を多くすればするほど利益が大きくなるシステムであり、高い電気料金を守ってきた。経営の苦労はないが、原発推進の三神話、「安全神話」「安定供給神話」「安価神話」の 
虚偽維持のため、原子力ムラ育成には貢献してきた。政官学とマスコミ対策のために協力関連企業と協力して、ムラというより原子力マフィアを育成することであった。結果的には、国際水準と比べても高い電気料金を実現・維持し、消費者におしつけてきた。 
 
 高い電気料金の理不尽に私が注目するようになったのは一昨年のことである。 
 それまでの多年にわたる反原発は科学技術的危険性や放射性廃棄物の未来世代への負の遺産、つまり道理的論理的立場からであった。その後、過疎の漁村に危険物を押しつける工業文明のもの豊かさへの反省と堅実な生活を目指す生き方へと私の脱原発は重心を移していた。この道義道理の立場は今も、もちろん不変不動であり、これからの運動にとっても基本だと思っている。 
 
 しかし、残念ながら、原子力マフィアにとっては、カエルの面に・・・。彼らは「金だけ 今だけ 自分だけ」の3だけ金主主義(民主主義ならぬ「お金のお金によるお金のための」)で世をリードしているからである。目先きの損得、金勘定には道理は無縁であり、無視されることになる。 
 無視できない現実を知ったのは、2015年春の電気料金の大幅値上げの公聴会のときであった。関電は2013年春に大幅値上げを行っている。 福島第一原発事故後、大幅赤字決算に転落したからである。その大幅値上げでも立ち直るどころか、2014年度も1,300億円の大赤字であった。経営体質に本質的欠陥があるからである。原発が全く発電していないのに、年間原発発電費として3,000億円?!電気を全く購入していないのに、日本原電に300億円の電気代を支払 
っている?! 事故対応の準備や廃燃料の後始末が軽視される中で、原発維持のための巨額の固定的支出があるからである。 
 
 このような経営状態のままで再度の値上げを認めろというのか。私を含め、公述人全員が反対であり、出席していた八木社長以下、関電側は説明に窮した。 
 主催した経済産業省も困惑して、大幅値上げを認めたものの、世論の反発に配慮して2段階に分割値上げ(6月と10月)と異例の措置をとらざるをえなかった。 
 13年、15年と2度の値上げの結果、標準家庭(260kW時/月)では、値上げ前の5,440円から6,360円。17%の大幅アップであり、年間1万1千円の負担増となった。原発維持のための割高料金である。 
 
(つちだたかし、「使い捨て時代を考える会」) 
 
(原発設置反対小浜市民の会・会報『はとぽっぽ通信』219号掲載分に著者が一部加筆したものです) 


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