2018年02月05日00時19分掲載  無料記事
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核・原子力

核兵器禁止でも怪気炎の小泉元首相

 初の一般的教書演説で核兵器の大増強を宣言したアメリカのトランプ大統領。負けじと核開発の継続を公言する北朝鮮の金正恩委員長。 
 今年も北東アジアは厳しい寒波のように緊張が漂う。 
 しかし希望もある。昨年7月に国連会議で採択された核兵器禁止条約だ。こんな情勢だからこそ、この条約を活かそうと日本の政界でも議論が始まった。 
 
 その中でおっと思わせたのが、小泉純一郎元首相の発言だ。週刊誌の「サンデー毎日」2月4日号でこう述べている。 
「なぜ核兵器を持てば安全なのか。それより核兵器禁止条約にどうして参加しないかわからない」 
 同誌のインタビューの主なテーマは、小泉元首相が熱を入れている脱原発の運動についてだが、それに絡めて核兵器禁止条約への好意的な立場を表明したのだ。日本政府に対して「条約にすぐに入れ」と求めたわけではない。だが、北朝鮮の動きをあげて「核抑止力は必要だ」と繰り返し、条約への反対を宣言している安倍首相との違いは明らか。 
 原発とは同列に論じられないとはいえ、国民世論のありかをしっかり見てボールを投げたのは、さすがの勘の良さと言えるだろう。 
 
 ノーベル平和賞をとった核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長と日本の各政党の代表が1月16日に行った討論会では、外務副大臣、自民党からも、条約への明確な反対は出されなかった。 
 公明党にいたっては「条約を高く評価する」とまで言った。 
 希望の党からは「条約に賛成、あるいはその方向で検討する超党派の議連をつくっては」との提案も出た。 
 もちろん、明確な賛成は「条約に入れば、より強い立場で北朝鮮に核兵器の放棄を迫ることができる」と述べた共産党の志位氏、社民党の福島氏、沖縄の風の糸数氏だけだったが、唯一の戦争被爆国の政治家としては、与党や立憲民主党も下手な言動はできないのだ。 
 
 条約に日本がいつ入るかは、世論、反核運動の盛り上がりとともに、国会議員の態度にかかっている。 
  その点でICANは、昨年から次のような「核兵器禁止条約への国会議員誓約」への賛同を呼びかけている。 
「我々、当誓約文に署名した議員は、核兵器なき世界の実現に向けた大きな一歩である2017年7月7日の核兵器禁止条約の採択を心より歓迎する。 
 我々は、条約前文に記述された、核兵器の使用によりもたらされる悲惨な人道的結末への深い懸念を共有し、その結果として生じるこれらの非人道的で忌まわしい兵器を廃絶する必要性を認識する。 
 我々は国会議員として、核兵器の廃絶は最高次元での地球規模の公共の利益であり、全人類の安全と幸福を促進する必要不可欠な過程であると考え、ゆえにこの歴史的な条約への我が国の署名と批准のために尽力することをここに誓う」 
 
 各国での賛同議員はICANの以下のサイトに出ている。http://www.icanw.org/projects/pledge/ 
 イタリアやオーストラリアなど、アメリカの同盟国でも100人以上の議員が賛同者になっているが、日本はまだのようだ。国会での議論とともに、この署名への賛同議員が増えることを期待したい。(西条節夫) 


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