2018年03月10日13時43分掲載  無料記事
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政治

特定秘密保護法と米朝首脳会談

  2013年の暮れに可決した特定秘密保護法は憲法で保障している思想や表現の自由を損なうものだとして第二次安倍政権が始まって最初の大がかりな抗議運動をもたらしたことで記憶に新しい。そのとき、日本政府が説明していたのはアメリカから安全保障に関する情報をもらうためには、日本国内で官僚が情報をリークしない法的仕組みが必要だということだった。この説明を見てもわかる通り、アメリカを向いて作られた法律であり、当時はオバマ政権だった。安倍首相はオバマ政権の下でいかに日本人がアメリカに尽くしたいかを米議会で切々と語ってきた。 
 
  ところが、蓋を開いて分かったことは米朝首脳会談という最も大きな安全保障上の情報が日本政府に一切伝わっていなかったらしいことである。米朝首脳会談という東アジアの安全保障上、最も重要となりうる政治的イベントについて何も知らされていなかった日本政府を見ると、いったいアメリカからどんな安保情報をもらうために特定秘密保護法を制定したのか、と聞きたくなるのは筆者だけではないだろう。 
 
  それまで安倍政権は北朝鮮とは対話するな、と世界に向けて訴えてきた。1910年に朝鮮半島を植民地化し、南北分断の原因を作ってきた日本人は今に至ってもなお南北朝鮮の対話に唾を吐きかけてきた。対話をつぶしかねない日本政府を交渉の蚊帳の外に置こうと米大統領と米国務省が考えても無理はない。ところが本来、政府を監視するべき役割の公共放送のNHKも散々、北朝鮮の政治的狙いに注意せよ、と政府に同調した放送を繰り返し行い、安倍政権の御用機関ぶりを世界にさらしてきたのである。 
 
  「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」と先代会長から受けた薫陶をNHKの職員たちが忠実に今も大切に受け継いでいるからだ。民間の極右放送局ならともかく、公共放送局としては失格だろう。NHKもまた安倍政権と一体化した放送局となり、番組企画の様々な新しい基準やルールをこしらえてリベラル派の番組ディレクターを干してきたのである。その組織的な迎合のプロセスは今後、解明されていくに違いない。 


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