2018年03月10日14時00分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201803101400376
みる・よむ・きく
もしかして日本最大のスリーパーセルは安倍晋三さんかも ティム・ワイナー『CIA秘録』がおもしろい
大阪に北朝鮮のスリーパーセルが大量に存在していて、金正恩委員長が死ぬと一斉に動き出してテロを実行すると「国際政治学者」(カッコつき)の三浦瑠麗氏がテレビで発言し、差別意識丸出しのヘイトクライムとしてひんしゅくを買った。スリーパーセルとは普段は生業について市民生活を送るが、いざ鎌倉の時は目を覚まして動き出すスパイのこと。それで思い出したのは安倍晋三現首相の祖父で、安倍首相が尊敬してやまない岸信介元首相のこと。彼がアメリカの諜報機関CIAのスパイだったことは、一部ではよく知られているが、それを確認したくなって、ニューヨーク・タイムズ記者ティム・ワイナーが書いた『CIA秘録』を本棚から探しだした。(大野和興)
2011年に文春文庫で翻訳本が出たこのノンフィクションは、すべてを第1次資料に当たり、正確で信頼できるものであると、国際的に定評がある。その「上」巻にCIAの対日工作の項がある。CIAは最初、戦争終結時の諜報責任者だった有末精三に目つけた。末松はかつてに部下に声をかけ、旧日本陸軍の諜報関係者を集めた。しかし有末らが集めた情報はすべてでっち上げで、しかも中国の工作員に情報を売る二重スパイであることがわかった。
次いで登場したのが右翼で政治フィクサーである児玉誉士夫。CIAは金目当ての児玉にさんざんむしり取られる。ワイナーは「アメリカの諜報機関が日本で行った『お粗末な仕事のやり方』の古典的な見本」だったと書いている。
そして行き着いたのがA級戦犯岸信介だった。CIAのエージェントは岸が巣鴨刑務所を出た数日後にすでに接触している。アメリカへの宣戦布告時の閣僚だったこの戦犯政治家をCIAは辛抱強く育てた。7年後、岸は首相に上りつめた。その背後にはCIAに金があった。その金は情報との交換で岸と自民党に流れ込んだ。岸は日本の外交政策をアメリカの望むものに変えていくことを約束した。基地を提供し、核兵器の配備もしたいと考えていた。岸が見返りに求めたのはアメリカからの政治的支援だった。いまの沖縄、日米地位協定もその流れの上にある。
「国際政治学者」の三浦さん、スリーパーセルはもしかして安倍晋三さんじゃないですか。そうとでも考えないと、この凡庸な男がこんなに長期政権を維持し、安倍一強などと呼ばれるようになることなど、考えられない(文春文庫『CIA秘録』上・下、ティム・ワイナー著)
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。