2018年03月29日14時09分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

長期勾留は人権侵害だ 根本行雄

 3月26日、学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題で、民進、自由、社民の野党3党の参院議員が、大阪拘置所(大阪市都島区)で勾留中の籠池泰典被告と接見した。 議員らによると、籠池被告は冒頭、「国策留置のようなものだ」と約8カ月間にわたる長期勾留を批判したという。日本では、被疑者を長期勾留するのが慣行となっている。日本の裁判官は人権感覚が低いので、放置されている悪慣行である。 
 
 毎日新聞(2018年3月26日)は、「接見したのは、民進の矢田稚子氏、自由の森裕子氏、社民の福島瑞穂氏。約50分間接見した。 議員らによると、籠池被告は冒頭、『国策留置のようなものだ』と約8カ月間にわたる長期勾留を批判。」したと伝えている。 
 
 「拘留」と「勾留」は同音異義語なので、勘違いしやすい。 
 
 専門家の間では、「拘留」を「てこうりゅう」、「勾留」を「かぎこうりゅう」と呼び、それぞれの漢字の部首で区別をしていると言われている。 
 
 警察は、捜査活動のなかで、被疑者を逮捕したり、取り調べをしたりなどをする。しかし、罪を犯した嫌疑があるなかで被疑者をそのまま釈放してしまうと、刑を免れる目的で逃亡や証拠隠滅を図る場合がある。特に、殺人、強盗などの重大事件を起こした被疑者については、重い刑から逃れるために逃亡や証拠隠滅を図るおそれが高いと判断される。そのため、逃亡や証拠隠滅のおそれのある被疑者に対しては、たとえ有罪判決が下る前であっても勾留を行い、身柄を拘束しておく。それを「勾留」と言う。 
 
 簡単に言えば、「拘留」は刑罰であり、「勾留」は刑罰ではない。「拘留」と「勾留」は、刑事施設に身柄が拘束されるという意味では同じだが、「拘留」は刑法で定められた刑罰であり、「勾留」は刑事手続きに基づいた措置の一種である。 
 
 筆者がたまたま傍聴した裁判では、被告人は拘置所で約半年余り拘留されていた。 
 
合宿免許の最終日、打ち上げで、数人で飲み屋に行った帰り道で、ケンカ口論になり、相手にケガを負わせてしまった事件である。被告人は執行猶予つきの有罪判決を受けた。 
 
 被疑者は逮捕当初から犯行を認めて自白しており、被疑者の家族は被害者に謝罪に行き、示談が成立していた。それにもかかわらず、被疑者は裁判の日まで釈放されることはなかったのである。 
 
 これは特別な事件ではない。日本では、いたるところで、こういう軽微な犯罪でも、長期の勾留が行われている。日本の裁判官は人権感覚が低いので、こういう長期の勾留そのものが「懲罰行為」であるという認識がない。 
 
 また、刑事裁判においては、判決がでるまでは、無罪推定の原則という考え方のもとに、被告人の人権を擁護することが憲法に明記されている。しかし、日本では、それとは反対に、被疑者の段階から、有罪の判決を受けたかのように取り扱うのが当たり前になっている。日本は、ほんとうに、人権感覚が低い国なのだ。 
 
 日本では、被疑者として逮捕されると、最長では23日間、取り調べのために勾留することができる。これは異常に長いものである。なぜなら、欧米諸国をはじめ、多くの国々では、24時間から72時間くらいが通常の勾留期間だからである。 
 
 普通の暮らしをしている人が23日間も警察の代用監獄や拘置所に勾留されたならば、それだけで社会的な信用をなくし、経済的に、社会的に、精神的に、大きな損害を受けることは、普通の暮らしをしている一般の国民ならば、だれでもが容易に理解できることだ。しかし、日本の司法関係者の多くにはそれを理解し、認識している人が少ないので、日本では、被疑者を長期勾留するのが慣行となっている。 
 
 長期勾留は、人権侵害である。ただちに、この悪慣行を廃止せよ。 


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