2018年04月09日14時23分掲載
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環境
第9回「ストップ・リニア!訴訟」口頭弁論 シイタケ栽培で地下水枯渇を恐れる農家、マンションの立ち退きを求められた住民 樫田秀樹
3月23日、JR東海のリニア中央新幹線計画について、国土交通省の事業認可取り消しを求めた「ストップ・リニア!訴訟」の第9回口頭弁論が東京地裁で開催され、3人の原告が意見陳述。地下水が必須のシイタケ栽培で地下水枯渇を恐れる農家、JR東海からマンション丸ごとの立ち退きを求められた住民たち。そして被告の引き延ばし(?)に「反論は3回までで」とくぎを刺した裁判長。
◆一人目 東京都町田市のシイタケ農家の森和幸さんは、自宅裏の地下をリニアが走行すると、シイタケ栽培や日常生活に必要な地下水が枯渇するかもしれないとの不安を訴えました。そして、裁判後の司法記者クラブ(裁判所内の記者会見場)では「JR東海は、この件を話し合うために私を来訪したことはただの一度もありません」と、自分の生活が軽視されていることに憤りを隠していませんでした。
◆二人目 神奈川県相模原市の桜井真理さんは、自宅はリニアルートから外れてはいますが、リニア中間駅がその隣に建設されるJR橋本駅まで10分以内の距離に住んでいます。
桜井さんは「リニア新幹線を考える相模原連絡会」のメンバーであり、ここのところは、リニア計画で立ち退かされるかもしれない人たちからの相談も受けております。実際、市ではリニア計画で100人単位の住民が立ち退くと予想されていて、昨年末にはJR東海が某マンションの全住民44世帯の立ち退きを求め、当然、住民とすれば困惑するばかりです。
マンションともなれば、この機会に補償金を得て老人ホームに入る資金にしようとか、抗う力がないとか、絶対反対とか、様々な意見がでてくるため、住民の意見を統一するのは至難の業かと思われます。
桜井さんは「終の棲家として市に住んでいる住民がいるのに、「その暮らしを一方的に踏みにじっていいのか。声を大にして問いたい」と訴えました。
◆三人目 「リニア新幹線を考える相模原連絡会」の代表でもある浅賀きみ江さんも相模原市在住で、リニアのルートは自宅から30メートル離れた場所の地下を走る予定。浅賀さんが強く訴えたのが、橋本駅に隣接する県立相原高校(農業)の敷地にリニア中間駅が建設されることになったため、相原高校が来年春に移転することでした。
相原高校の散策路←相原高校の散策路。誰でも自由に通行できる。 相原高校の牛←相原高校は農業高校。生徒たちは自分で搾乳したり、加工品をつくり、曜日を決めて、正門前や校内でその販売も行っている。
校門閉鎖が当たり前の昨今ですが、相原高校はその広い敷地の中に開校以来約100年をかけて整備されてきた並木道があり、そこは一般住民の散策路として開放されており、牛を連れて歩いている学生さんたちは目が合えば「こんにちは!」と挨拶をしてくれる。保育園や小学校の児童のために、動物とのふれあいや農業体験を実践するなど、けっこう地域のなかのオアシス的な場所として重宝されております。
「考える会」では、相原高校を移転させないでほしい旨の署名を5000筆以上も県教育委員会に提出するなど、多くの市民の反対の声がある現実に、意見陳述では「納得できません」と締めました。
リニア第9回口頭弁論原告3人←原告の3人。手前から浅賀きみ江さん、桜井真理さん、森和幸さん。
●原告側意見陳述は終了。だが被告は今まで原告の主張への反論を準備していなかったって?
さて、第2回口頭弁論から第9回口頭弁論までの8回にわたり、リニアが通過する1都6県の各地に居住する原告の意見陳述が行われたわけですが、今回をもって1年半にわたって行われた原告意見陳述は終了となります。
裁判の次回以降は、被告の国(国土交通省)と、「参加人」として裁判に参加するJR東海から、原告の準備書面と意見陳述に対しての反論が3回にわたって行われる予定です。
とはいえ、この「3回」もけっこう裁判長がねじこんで実現した回数です。こんなやりとりがありました。ただし高速のメモ書きなので、一部書ききれなかった発言もあるので、おおよそで書いております。( )内の言葉は私が書いた補足説明です。
古田孝夫裁判長「参加人(JR東海)の書面をいつまでにいただけますか?」
被告側弁護士「5月末には。そして、原告への私たちの反論も、原告の主張が長い時間(1年半)がかかったので、すぐには反論の準備ができません」
裁判長「え、(ほぼ2カ月ごとに行われた)原告からの主張(準備書面や意見陳述)に対して、被告は順次反論の準備を進めているとばかり思っていたのですが。(何も準備していないとは)これまでかかった時間(1年半)を被告が繰り返すということですか?」
被告「国としては、原告の主張はまだ不十分だと思っています」
裁判長「(数秒間沈黙)。なかなかつながらない作業になりますね。回数を切っていただけますかね。2回とか3回とか」
被告「4回・・」
裁判長「(これまでのペースの)2カ月ごとにやると、4回だと8カ月もかかります。3回にしていただけませんか?」
原告・横山聡弁護士「こちらも、(書面提出や意見陳述を)順次やってきて、その間に、準備されていると思っていました。3回以内でお願いします!」(相当に憤っておりました)
裁判長「法廷の空き具合もありますので。次回は早くても6月改訂となります。次は早くても8月か9月。できればそこで完結していただきたいが、11月までではどうですか?」
被告「できるだけ11月には」(と立ち上がって一礼する)
裁判長「その間、原告には原告適格の根拠の整理を」
(注:原告適格とは、そもそも訴える資格のある人のこと。たとえば、原告でも海外に住んでいて日本に来る予定もない人は、リニアとの利害関係は生じないので、訴える適格がない。またたとえば、リニア沿線外に住んでいるが、リニア工事で発生する残土を運ぶダンプカーがすぐそばを通るなどの場合は、騒音や振動などの被害が生じるので原告適格があると主張できる。ただし、ダンプ街道からどれだけ離れているかで、被告は「原告適格はない」と言うかもしれない)
横山「JR東海の準備書面を見たが、どこにどれだけの施設を建設するのかが曖昧。工事で発生する残土にしても、どういうルートで運んで、どこに処分するかが一切書いていない。それをせずして、原告適格を判断できません」
裁判長「(被告に)決まっているんですか?」
被告「明らかにできるところは明らかにしたいです」
横山「ルートは決まっているのではないんですか!? そういう場当たり的なことをするんですか!?」
被告 (聞きとれず)
裁判長「これは取り消し請求ですから、事業認可時点での計画を基点にすれば、何も決まっていない」
原告・関島保雄弁護士「リニアのルートを外れていても、広範囲に被害はあります(騒音や地下水枯渇など)。そもそも残土をどこに捨てるかのルートも決まっていない。可能性のある範囲で原告適格を考えています。(たとえば)水資源枯渇の危険性も主張しているが、神奈川の住民にも適格があると思います」
裁判長「広めに範囲を設定していただき、(原告738人の)一人ひとりの適格を決めていただけますか?」
横山「(一礼)」
ということで、被告側がこれまでの原告からの準備書面や意見陳述に対しての、反論の準備をしていなかったともとれる発言をしたわけですが、傍聴していた人からは、これからゆっくりとそれを準備して裁判を引き延ばすつもりだったのかとの声も聞こえておりました。
これ、裁判長が「3回」と仕切らなかったらどうなっていたんだろう。
(ジャーナリスト)
樫田秀樹ブログ「記事の裏だって伝えたい」から
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