2018年04月11日22時03分掲載  無料記事
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コラム

アメリカに見切りをつけられた政治家、安倍晋三

  森友問題での佐川前理財局長の証人喚問で寒々しく空しい国会の映像を見せつけられ、以後、元気になったかのような安倍首相を見て再び、いや三たび唖然とした市民は多かったに違いない。だが、ここに来て朝日新聞やNHKが七転び八起きのような非常な頑張りを見せ、野党議員が共同で戦い、再び安倍首相をリングのコーナーに追い詰めようとしている。これらの人々の仕事は素晴らしいが、実際のところ、安倍首相を裏で追い詰めたのは米政権ではなかっただろうか。 
 
  トランプ政権が安倍首相と外務省を完全に北朝鮮との交渉の蚊帳の外に置き、さらに日本だけに鉄鋼などの関税をかける措置をこの時期に取ったということである。これらのことは「外交の安倍」と安倍首相を讃えてきたインナーサークルの外務官僚や自民党員や「安倍べったり」のメディア記者を別とすると、安倍首相にはそもそも外交などあったのだろうか、と大きな疑念をつきつけて余りあった。米国が安倍首相を裸の王様だと名指ししたようなものである。 
 
  もしこれを望んだのがトランプ大統領だったとしたら、これは何を意味しているのだろうか。以下は、単なる仮説にすぎない。思うに安倍政権はあまりにもレイシズムであり過ぎた。レイシストと言えばトランプ大統領自身がレイシストだと言う人は多いだろう。ただ、ここで挙げたいのは安倍政権の5年間に日本国内では余りにもレイシズムが加速したことだ。政治のトップに位置する人間たちがレイシズム発言を繰り返すことは国全体がレイシズムに対して無頓着となり、差別に寛容になることに他ならない。これは先進社会では許されないことである。いや先進社会であろうとなかろうと許されないことだ。しかし、日本社会は自省せず、政治家がどのようなレイシズムの発言をしようと批判を受けて後から撤回さえすれば許容されてきた。 
 
  一方、米国の場合、反ユダヤ主義に黙ってはおかないユダヤ系の力がある。思い出せば安倍首相の側近、麻生副首相の「ヒトラーの動機は間違っていなかった」とか、「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」という発言。あるいは原田日銀理事による<ヒトラーが正しい財政・金融政策をした>といった意味の発言など、安倍政権は歴史修正主義の極右政権と世界から見なされてきた。そもそも安倍首相の悲願は「戦後レジーム」を終わらせることだったはずだ。したがって安倍政権は第二次大戦で米国の敵だったあの大日本帝国を再興しようとしていると見られても無理はなかった。実際、安倍首相は公共放送であるNHKに特攻賛美の作品を書いた極右思想の経営委員を送り込み、経営委員長に日本会議の関係者を据え、NHKをかなりな程度まで翼賛放送局に改造し、その他のメディアもかなりな程度まで統制した。ヒトラーやゲッペルスを想起させて十分である。安倍政権と日本国が米国と刺し違える覚悟があればそうしてもよかっただろう。だが、安倍首相にはそこまでのガッツはなかった。 
 
  今、これを米政権を反レイシズムなどと讃えるために書いているのではない。ただ事実としてトランプの娘婿がユダヤ人で、イスラエルとの結びつきが強いことはすでに国際報道では常識だ。副首相らのヒトラー賛美発言はたとえ後で撤回されようとそれで許されるのは日本国内だけであって、国際社会では許容されるべくもないことである。安倍政権はあまりにもホワイトハウスと国務省に対して〜無意識だっただろうが〜激しい挑発を繰り返してきた。アメリカファーストのトランプが日本の歴史修正主義者たちを許容するはずはない。常識で考えれば明らかではないか。ゴルフをしたり、贈り物をしたりすることでトランプ大統領と友達になれると本当に安倍首相は思っていたのだろうか。トランプが大統領当選直後、就任準備として最初に外交のレクチャーを受けたのはユダヤ系で、国務長官退官後は中国政府の顧問をしてきたキッシンジャーだったのは有名な話である。 
 
  中国も米国もロシアも第二次大戦では日本と戦った同盟国である。今回の北朝鮮との交渉ではこの第二次大戦中の外交関係が再び現れたかのようである。つまり、一歩間違えれば対日包囲網にもなりかねない。安倍政権のレイシズムと歴史修正主義によって日本国が経済制裁の対象となればもう日本製品を買う国がほとんどなくなってしまう可能性もある。石油やレアメタルなどの資源すら手に入らなくなることにもなりかねない。このところ、ようやく隠されてきた書類を表に出し始めた日本の官僚たちがこのことを意識しているか、していないかはわからないが、米政府の安倍政権に対する冷徹に突き放した態度と官僚たちが安倍政権に挑戦し始めたことが、単なる偶然の一致なのか、と思えるのだ。もちろん、本当にそうなのかどうかはわからない。東アジアと米国を見ながら、思いついたままに書いているのだ。 


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