2018年04月24日21時54分掲載  無料記事
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コラム

非TVの映像メディアの重要性がTV映像に逆転  この5年で映像メディアには過去最大の変化が起きた

  安倍政権の過去5年の間にTVの報道が全般的に衰退し、重要性が弱まった。その理由は官邸との夕食会をはじめ、政府の統制下で批判的報道があまりできなかったことにある。と言ってもTVの影響力は依然大きくある。とくに新聞や海外メディアへのアクセスのない人々はTVから情報を得ているのである。そうではあるが、情報に感度の高い人々の間でTVの重要性は確実に下がってきているのだ。 
 
  その最大の要因はTV報道ではインタビューにしても、記者会見にしても、デモや集会にしても、放送上の時間の制限から全体のごくごく一部しか伝えられないことにある。一方、テレビ以外のメディアがインターネットを使って記者会見や講演やデモなどの一部始終を放流するようになって、今までのテレビの短い切り取りには満足できなくなってきたに違いない。1時間の講演を20秒に切り取るのは簡単ではない。プロの仕事として素晴らしい切り取りをするディレクターや編集者は存在する。しかし、非テレビの映像班の一部始終の放流はそうした職人芸をはるかに超える価値を生み出している。視聴者は自分自身でその場を頭で編集し、意味づけしたいのだ。そこに面白みがあるのである。 
 
  昔、僕はインタビューから30秒切り取る時に「あ〜」とか「う〜」と言った間合いを15回カットしたことがあった。コンマ何秒を抜いていくのである。放送時間の制限はそれくらい厳格で絶対条件である。放送時間が1時間とか、30分というのは放送局の制約でしかなく、視聴者の側の制約ではないのである。だから、TV報道は出来事のダイジェスト以上の意味を持たなくなりつつあり、真実はインターネットで直接、ノーカットで見たいと思う人が増えている。とくにこの5年間でそのような要求が増えたに違いない。たとえば民進党による野党合同の国会内での質問のノーカット映像のYoutubeへの放流はTVのチャンネルよりもはるかに面白い。新聞社なども映像部門に力を入れてTV局よりも真実を伝えている、と思うことが増えてきた。そして技術的にもTVに遜色ない映像や音声のクリアさが実現しつつある。とくに音声がクリアに拾えるようになってきたことは重要な変化だ。 
 
  そんな一方でテレビ局は、と言えば多チャンネルを設けてあれこれ趣向を凝らした番組シリーズを作ろうとして頑張っているものの、最も国民の関心である国会や記者会見などの映像で、すでに非テレビ媒体に主役を奪われつつある。すでに情報感度の高い人にとっては各局のテレビ報道が政治的に視聴者を一定の方向に誘導しようとていることが痛いほど目についてしまっているのだ。しかも、多くの場合はスポンサーである大企業や資産家あるいは政治権力を持つ側に有利になるように、だ。そういう疑いもあって、わざわざ余計な趣向を番組に凝らすこと自体がストレートに時代の主要なテーマと取り組むことから逃避しているだけではないか、と見られている。 
 
 
村上良太 


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