2018年05月01日16時08分掲載  無料記事
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農と食

二大学の研究チームがネオニコ系農薬がミツバチに及ぼす障害を報告

 二つ大学の研究チームがネ鴎オニコ系農薬が報告ミツバチに及ぼす障害を報告した。ブエノスアイレス大学の研究チームは、ネオニコチノイド系農薬の一つイミダクロプリドとグリホサートが巣の中で仕事をする若いセイヨウミツバチの働きバチの味覚知覚と嗅覚学習に悪影響を及ぼすとする研究結果を専門誌に発表。またブルツブルグ大学の研究チームは、ネオニコ系農薬のフルピラジフロンがミツバチの味覚、学習、記憶能力に悪影響を及ぼすとする研究結果を発表した。(有機農業ニュースクリップ) 
 
■ネオニコやグリホサートはミツバチの学習障害の原因 
 
 ブエノスアイレス大学の研究チームは、ネオニコチノイド系農薬の一つイミダクロプリドとグリホサートの現実的な濃度の慢性曝露の結果、巣の中で仕事をする若いセイヨウミツバチの働きバチの味覚知覚と嗅覚学習に悪影響を及ぼすとする研究結果を専門誌に発表した。グリホサートはまた、飼育中の食物摂取を減少させたという。著者らは、特に夏の終わりにコロニーの生存を脅かす可能性があると懸念しているという。 
 
 発表によれば、グリホサートは広く農作物に使用されており、その痕跡はネオニコチノイド系農薬と一緒に見出される可能性が高く、除草剤と考えられているものの、ミツバチを含む動物に悪影響が認められているとしている。そして、最も重要な花粉媒介動物のセイヨウミツバチは、この2つの農薬に暴露されているとしている。研究は5日齢、9日齢、14日齢のハチで行われたとしている。 
 
・Joura of Experimental Biology, 2018-4-11 
  Impaired associative learning after chronic exposure to pesticides in young adult honey bees 
  http://jeb.biologists.org/content/221/7/jeb176644 
 
 ・Cosmos, 2018-4-12 
  Young, hive-bound bees befuddled by common chemicals 
https://cosmosmagazine.com/biology/young-hive-bound-bees-befuddled-by-common-chemicals 
 
 ハチミツのネオニコ系農薬による汚染は、日本のみならず世界的に広がっている。スイスのヌーシャテル大学などの研究チームは昨年10月、世界各地の蜂蜜の75%が少なくとも1種類のネオニコチノイド系農薬を含んでいるとの研究結果をサイエンス誌に発表している。 
 
 ・Science, 2017-10-6 
  A worldwide survey of neonicotinoids in honey 
  http://science.sciencemag.org/content/358/6359/109 
 
 グリホサートによる汚染について米国では2014年、市販の大豆製品と蜂蜜などの残留グリホサートを調査した結果、豆乳や豆腐ではNDであったが、ハチミツは6割の製品から最大0.163ppm、しょう油は3割の製品から最大0.564ppm検出したと報告されている。 
 
 ・Journal of Environmental & Analytical Toxicology, 2014-11-19 
  Survey of Glyphosate Residues in Honey, Corn and Soy Products 
  http://omicsonline.org/open-access/survey-of-glyphosate-residues-in-honey-corn-and-soy-products-2161-0525.1000249.php?aid=36354 
 
 発表されたブエノスアイレス大学の研究チームの研究は、特段に高い濃度ではなく「現実的な濃度」のイミダクロプリドとグリホサートを与えたもので、自然界でも十分に起こりうるものといえるのではないか。 
 
(参考) 
 ・ネオニコチノイド農薬関連年表 
  http://organic-newsclip.info/nouyaku/neonico-table.html 
 
【関連記事】 
 ・地球規模に広がるネオニコ汚染 世界の蜂蜜の75%から見つかる 
  http://organic-newsclip.info/log/2017/17100856-1.html 
 
 ・ネオニコチノイド系農薬はミツバチに高いリスク EFSAの再評価 
  http://organic-newsclip.info/log/2018/18030892-1.html 
 
 ・ネオニコ系農薬の代替はIPMが有効 新たな研究 
  http://organic-newsclip.info/log/2018/18020890-1.html 
 
 
■ネオニコ系フルピラジフロン ミツバチの味覚、学習と記憶能力に悪影響を及ぼす 
 
 ブルツブルグ大学の研究チームは3月21日、ネオニコ系農薬のフルピラジフロンがミツバチの味覚、学習、記憶能力に悪影響を及ぼすとする研究結果をサイエンティフィック・リポート(電子版)に発表した。フルピラジフロンはバイエルが開発した殺虫剤で、昆虫の脳のニコチン性アセチルコリン受容体に影響を及ぼす物質とされ、シバントの商品名で販売している。EUは2015年8月に、日本は同年12月に承認している。 
 
 研究によれば、より少ない投与量では有害な影響を示さなかったが、投与量が1.2マイクログラムで知覚と学習のパフォーマンスが大幅に低下したとしている。その上で、他の農薬との複合的な影響はまだわからず、野生のミツバチ類などポリネーターへの影響を調べる必要があるとしている。 
 
 欧州食品安全機関(EFSA)は今年2月、EU委員会が暫定的に一時使用禁止にしているイミダクロプリドなど3種類のネオニコ系農薬がミツバチなどに悪影響を及ぼすと認める評価結果を明らかにしている。この評価を受けてEU委員会は4月26日、禁止に向けて加盟国による投票を行おうとしている。フルピラジフロンは、EU委員会が禁止しようとしているネオニコ系3剤の代替品として検討されているという。 
 
 ・University of Wurzburg, 2018-3-28 
  Pesticides give bees a hard time 
  https://www.uni-wuerzburg.de/en/sonstiges/news/detail/news/pesticides-give-bees-a-hard-time/ 
 
 ・Scientific Reports, 2018-3-21 
  Effects of the novel pesticide flupyradifurone (Sivanto) on honeybee taste and cognition 
  https://www.nature.com/articles/s41598-018-23200-0 
http://dx.doi.org/10.1038/s41598-018-23200-0 
 
 国立環境研究所のまとめによれば、農薬登録後の2016年のフルピラジフロンの出荷量はゼロだったという。 
 
 ・国立環境研究所 農薬データベース 
  フルピラジフロン 
  http://www.nies.go.jp/kis-plus/noyaku_php/noyaku_select.php?cas_id=951659-40-8&cas=951659-40-8&jname=-- 
 
【関連記事】 
 ・ネオニコ系農薬出荷量が減少傾向 
  http://organic-newsclip.info/log/2018/18040910-1.html 
 
 ・農水省 ネオニコ系スルホキサフロルを農薬登録 
  http://organic-newsclip.info/log/2017/17120875-1.html 


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