2018年05月03日15時49分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201805031549414

検証・メディア

朝鮮半島の非核化 問われるべきは、合衆国政府にその意思があるかどうか  Bark at Illusions

 韓国のムン・ジェイン大統領と朝鮮のキム・ジョンウン労働党委員長は、4月27日に行われた歴史的な首脳会談で、朝鮮戦争を正式に終結させて平和協定を締結するための交渉を推進することや朝鮮半島の完全な非核化を目指すことで合意した(板門店宣言)。日本のマスメディアは板門店宣言に非核化に向けた具体的なスケジュールや措置が示されていないことや、過去についての誤った認識などを根拠に朝鮮政府が本当に宣言通りに核を放棄するのか疑っている。しかし朝鮮の核問題の本質を考えれば、朝鮮半島の非核化が実現するかどうかは、合衆国政府が朝鮮に対する敵視政策をやめるか否かという問題だ。 
 
 朝鮮の核開発は、合衆国の侵略に対する抑止のために行われてきた。朝鮮は、朝鮮戦争で合衆国に国を完全に破壊され、その後も現在に至るまで核を含む合衆国の軍事的脅威にさらされ続けている。また核兵器を保有していなかったイラクやリビアが合衆国の侵略によって国が荒廃させられている現実もある。朝鮮にとって、合衆国の脅威は現実的なものだ。そのため、合衆国の脅威がなくならない限り朝鮮が核を放棄するとは考えにくいが、合衆国の脅威がなくなれば、朝鮮が核を放棄する可能性が高い。 
南北首脳会談でキム・ジョンウンは合衆国が朝鮮を侵略しないと約束するなら朝鮮は核兵器を保有する必要がないと語ったと伝えられているが、朝鮮政府はこれまで一貫して合衆国との平和協定の締結や国交正常化を求めている 。 
 マスメディアは、朝鮮は国際社会との合意を反故にしてきたとか、国際社会を裏切ってきたなどと主張しているけれども、こうした主張は事実と正反対だ。日刊ベリタ(18/2/1、18/3/12、他)ではこれまで何度も述べてきたので詳細は省くが、朝鮮は自国が侵略されないことや関係正常化などを約束した合衆国とのこれまでの合意(米韓枠組み合意など)を誠実に守ろうと努力してきた。朝鮮が合意を破って核開発を再開させたのは、合衆国が先に合意を破った後のことだった。 
  つまり合衆国政府に朝鮮半島を非核化する気があるなら、朝鮮に対する敵視政策をやめて平和協定を締結するための交渉を誠実に行えば実現する可能性が高い。 
しかしマスメディアは、朝鮮が非核化に向けて動き出せば「最大限の対価を引き出すために会談の主導権を握りたい思惑がある」(NHKニュース7 18/4/21)とか「譲歩したように見せかけて国際社会から見返りを引き出すのが狙いではないか」(NHK ニュースウォッチ9 18/4/23)などとその動機を疑ってみたり、朝鮮の求める諸外国との国交正常化や合衆国から侵略されないための確約について、朝鮮政府は「見返り」として「経済制裁の緩和」や「体制保証」を狙っているなどと表現して、それらが全く考慮される価値のないものであるかのような印象を与え、実現可能性のある解決策を見えにくくしている。 
 
 合衆国政府は朝鮮政府の前向きな姿勢に応えて「朝鮮侵略や占領を想定した米韓合同軍事演習を中止して平和協定締結に向けた交渉を始めるべきだ」とか「朝鮮に対する敵視政策をやめて国交正常化を目指すべきだ」という合理的な意見がマスメディアで示されることはほとんどない 。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。