2018年05月25日15時47分掲載  無料記事
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社会

チッソの後藤社長の暴言 根本行雄

 5月1日、水俣病の原因企業であるチッソの後藤舜吉社長は、水俣病犠牲者慰霊式の後に報道陣の取材に応じ、水俣病被害者救済特別措置法(特措法)に基づく救済対象者が2014年8月の時点で確定していることに触れて「水俣病の被害者救済は終わっている」と発言した。 慰霊式後の記者会見で後藤社長の発言について問われた中川雅治環境相は「現時点で患者認定の申請が出されていて訴訟も提起されている。救済終了とは言い難い」と話した。 患者認定を求める訴訟などを続ける「水俣病被害者互助会」事務局の谷洋一さんは「被害の実態を全く理解していない」と批判した。5月9日、「水俣病被害者・支援者連絡会」は、チッソの後藤社長の発言の撤回と社長辞任を同社に求めた。 
 
 
 
 
 
 
 
 チッソの後藤社長は、水俣病犠牲者慰霊式の後に報道陣の取材に応じ、水俣病被害者救済特別措置法(特措法)に基づく救済対象者が2014年8月の時点で確定していることに触れて「水俣病の被害者救済は終わっている」と発言した。 
 
 
 
 
 
 毎日新聞は、2018年5月2日の記事で、水俣病犠牲者慰霊式のようすを、中里顕、清水晃平両記者は、次のように伝えている。 
 
 
 
 式は市などが主催して午後1時半に始まった。患者・遺族代表らが碑に献水し、遺族が新たに奉納を希望した認定患者4人の名簿を奉納。サイレンに合わせて水俣市立袋中3年の橋迫未尊(みこと)さんと緒方琴菜(ことな)さんが鎮魂の鐘を鳴らした。 
 
 式の途中で降り出した雨が会場のテントを打つ中、水俣市の高岡利治市長は「我々に託されたのは、環境を大切にしながら経済基盤の強い活力ある社会を構築することだ」と述べた。献花では多くの参列者が頭を深く下げて手を合わせた。 
 
 参列した中川雅治環境相は昨年8月に発効した「水銀に関する水俣条約」に触れ「水俣病を経験した我が国は世界の水銀対策をけん引していく重要な役割を担っている。水銀による環境汚染や健康被害のない世界の実現に取り組む」と誓った。 
 
 蒲島郁夫熊本県知事は「熊本県には水俣病のような悲惨な公害が二度と起こらないよう、その経験と教訓を伝えていく責務がある。患者の方々は体調面に不安を抱えながら公害の防止と水銀規制の必要性を強く訴えており、県としてもしっかり発信する」と述べた。 
 
 原因企業チッソの後藤舜吉社長は「多くの方が犠牲になり、地域に多大な迷惑をかけたことは痛恨の極み。患者の皆様に対する補償責任完遂の努力を今後も変わることなく続ける」と述べた。 
 
 
 
 
 
 このような慰霊式の後に、チッソの後藤社長の暴言が出た。 
 
 
 
 5月1日、後藤社長は水俣市であった慰霊式後の取材で「救済は終わっている。早く(補償に関わる公的債務などの)手かせ、足かせを取り除いて(他企業と)競争できることが必要」と発言した。 
 
 
 
 
 
 毎日新聞(2018年5月1日)の笠井光俊記者は、次のように伝えている。 
 
 
 
 慰霊式は、患者団体などで作る実行委員会と水俣市が主催し、中川雅治環境相や蒲島郁夫熊本県知事、患者、市民らが参列。新たに遺族が奉納を希望した故人の認定患者4人の名簿が奉納され、患者・遺族代表の小児性患者の金子親雄さん(66)らが「祈りの言葉」を述べる。 
 
 水俣病は1956年5月1日、原因企業チッソ水俣工場の付属病院長が「原因不明の患者発生」と保健所に届け出たことで公式確認された。国は68年、工場の排水に含まれていた有機水銀が原因と断定し、公害認定した。 
 
 熊本、鹿児島両県で認定された患者は3月末現在で計2282人。このうち85%は既に死亡しており、この1年間だけでも市立水俣病資料館の語り部の女性ら約20人が亡くなった。一方、両県で約1900人が患者認定を申請しているが、この1年間で新たに認定された人はいない。また熊本や福岡、東京、大阪の裁判所では患者認定や損害賠償を求めた訴訟が続いている。 
 
 
 
 
 
 チッソの後藤社長は、このような水俣病の患者たちの現状を知らないのだろう。知る意思もないのかもしれない。有能な経営者であるかもしれないが、水俣病の原因となった企業であるという自覚が足りないのだろう。チッソという企業は、水俣病の原因となった企業であるという自覚をもち、それを継承し、患者たちの苦しみを少しでも早急に改善していく歴史的責務、法律的責務があるということを、少なくとも経営者は継承していかなければならないだろう。忘れることは許されないのだ。 
 
 
 
 
 
 5月9日、水俣病の患者団体などでつくる「水俣病被害者・支援者連絡会」は、熊本県水俣市のチッソ水俣本部を訪れ、チッソの後藤舜吉社長が今年の水俣病慰霊式で述べた「(被害者の)救済は終わっている」との発言の撤回と社長辞任を求めた。 
 
 
 
 
 
 5月14日、水俣病原因企業チッソの子会社JNCの溝部仰起取締役常務執行役員は、記者会見で水俣病患者への補償について「今後も真摯(しんし)に補償、救済を継続していく」と強調した。チッソの後藤舜吉社長が5月1日に「水俣病特別措置法の救済は終了した」と発言したことについて「補償や救済が今後行われないように受けとめられたが、そうではない」と説明した。 
 
 
 
 
 
 5月18日、水俣病の原因企業チッソは、後藤舜吉社長が今年の水俣病慰霊式後に述べた「(水俣病被害者の)救済は終わっている」との発言について「不安と不快の念を与えてしまい、深くおわびします」と後藤氏名の文書で謝罪し、発言を撤回した。被害者側は「発言は本音」と非難した。 
 
 
 
 
 
 加害者が忘れても、被害者は忘れない。加害者が忘れたいと思っていようとも、被害者はそれを許さない。 
 
 
 
 
 
付記 5月9日以降の情報は、すべて毎日新聞の記事を利用している。 


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