2018年07月07日12時45分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

オウム幹部、大量死刑 国家による人権侵害と真相隠し

 7月6日、政府は松本智津夫オウム真理教元代表を含む幹部7人を死刑した。死刑そのものが国家による人権侵害といて国際的に廃止の方向にある中での大量死刑に国際社会からの批判が強まっている。また、オウムの犯罪の真相が明らかにならない中での幹部死刑は、オウム事件そのものを歴史の闇に葬ることになる。真相が明かになることで国家にとって不都合なことが出てくるのではないか、という疑念さえわいてくる。国際人権団体アムネスティは6日、「(この処刑は)正義の実現になりえない」との声明を発表した。(大野和興) 
 
以下、アムネスティンの声明を紹介する―― 
 
今朝、オウム真理教元代表を含む元幹部7人の死刑が執行されたが、処刑は正義の実現にはなりえない。 
 
オウム真理教は、1995年の地下鉄サリン事件のほか松本サリン事件、坂本弁護士一家殺害事件などの凶悪事件を引き起こし、元幹部ら13人が死刑判決を受けた。一連のオウム事件の死刑確定者に対して、今回が初の死刑執行となった。地下鉄サリン事件では神経ガスにさらされて13人が死亡、数千人が被害に苦しんでいる。 
 
1日に7人の大量処刑は、近年類を見ない。彼らの犯行は卑劣で、罪を償うのは当然である。しかし、処刑されたところで、決して償いにはならない。 
 
正義の実現には、真相究明が欠かせない。また、すべての人の人権を尊重してこその正義である。 人権を否定し、真相究明の機会を奪う死刑は、正義とは程遠い。 
 
今朝、処刑されたのは、松本智津夫さん、中川智正さん、新実智光さん、早川紀代秀さん、井上嘉浩さん、遠藤誠一さん、土谷正実さんの7人。執行は、全国の拘置所で行われた。数人が、再審請求をしているものとみられる。 
 
各国の人権状況を審査する国連の普遍的定期審査で、日本は死刑制度の改革を迫られてきたが、この3月、またもや勧告受け入れを拒否した。 
 
日本政府は「世論が望む」から死刑執行は避けられない、と繰り返し主張してきた。しかし、本来、国がすべきことは、一歩踏み出して、人権尊重を主導することである。 
 
アムネスティは、犯罪の性格や犯罪者の特質、処刑方法にかかわらず、いかなる死刑にも反対する。過去40年以上にわたり、終始一貫して死刑の廃止に取り組んでいる。 
 
アムネスティ国際ニュース 
2018年7月6日 
 
※死刑執行抗議声明における「敬称」について アムネスティ日本は、現在、ニュースリリースや公式声明などで使用する敬称を、原則として「さん」に統一しています。また、人権擁護団体として、人間はす べて平等であるという原則に基づいて活動しており、死刑確定者とその他の人々を差別しない、差別してはならない、という立場に立っています。そのため、死刑確定者や執行された人の敬称も原則として「さん」を使用しています。 


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