2018年07月09日00時56分掲載  無料記事
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検証・メディア

オウム真理教がブームになった時代

  オウム真理教がブームになったのは1980年代半ばだと思い返すのだが、当時の日本は歴史的に見ても比較する時代のない大変な好景気の中にあった。「バブル時代」という言葉で表現されるようになるのは1991年に好景気がはじけて不況に突入してからだったと記憶する。1990年代後半から明確に日本はデフレ時代に突入し、ますます国民が貧乏になり、庶民の可処分所得が少なくなっていく時代だったが、1980年代半ばはすべてが逆だったと言って過言ではないだろう。今ではあの頃を思い出すこと自体が難しい。それくらい、当時の空気は今と違っていた。サラリーマンやOLがボーナスの札束を喫茶店のテーブルに立てることができたという話をよく聞いたものだ。高校時代の友人夫婦は金の延べ棒を買っていた。 
 
  このような時代にあってオウム真理教に入信する人々は財産をすべて投げうって出家しなくてはならない、という話だった。そうであるなら、まさに金余りのあの時代に極めて起こりえたものだったと思える。金ですべてが買える、金ですべてが解決できる・・・こうした価値観に疑問を持ったり、そうした社会に違和感を抱いたりした若者が多かったのだろうと思う。そして社会主義圏も崩壊に瀕していた。あの時代に疑問を持った若者の1つのたまり場がオウム真理教の教団だったのではあるまいか。30年後の今になってみると、金余りどころか、庶民にとっては金なしの時代であり、価値観も大きく変わってしまった。がゆえに、あのようなものがなぜ広がったのかを想像することが難しくなったかもしれない。 


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