2018年07月15日14時58分掲載  無料記事
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検証・メディア

合衆国政府に合意の順守を求める朝鮮政府を貶めるマスメディア  Bark at Illusions

 ピョンヤンで今月6日と7日に行われた米朝高官協議について、朝鮮政府は合衆国側が「(米朝)首脳会談の精神に反してCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)だの、申告だの、検証だのと言って、一方的に強盗のように非核化要求だけを持ち出した。情勢の悪化と戦争を防ぐための基本問題である朝鮮半島の平和体制構築問題については一切言及せず、既に合意された(朝鮮戦争の)終戦宣言問題までいろいろな条件と口実を設けて、遠く後回しにしようとする立場を取った」と不満を表明している。米朝首脳会談の共同声明では「朝鮮半島の完全な非核化」とともに、「新しい米朝関係の構築」や「朝鮮半島の永続的かつ安定的な平和体制の構築」、「朝鮮の安全の保証」が明確に宣言されていることから、合衆国が朝鮮の非核化だけを求めるなら朝鮮政府の抗議は当然であり正当と言えるが、マスメディアは「非核化交渉の主導権を握るための外交的な牽制」、「北朝鮮は交渉を自らのペースに引き込もう」としているなどと歪曲してニュースを伝えている。 
 
 例えば、 
 
「6月の米朝首脳会談後初めて行われた高官協議で、米側が『進展』を強調した直後に、北朝鮮側は非核化の要求は一方的だと不満をあらわにした。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、中国から体制保証や経済支援などを得ているとみられ、対米交渉に自信を深めている。今後の非核化交渉の主導権を握るための外交的な牽制とみられる」(朝日18/7/8) 
 
「北朝鮮側は非核化よりも北朝鮮に『安全の保証』を提供する平和体制構築を優先するよう主張しており、米国側は困難な駆け引きを迫られそうだ。……今回の米朝協議直後に外務省報道官談話で米国側への強烈な不満を表明した北朝鮮側は、作業部会での協議に応じるにしても、検証可能な非核化よりも『安全の保証』の制度的枠組みの明確化や経済制裁の緩和と経済協力など、自らの要求を優先するよう強く主張する可能性が高そうだ」(毎日18/7/8) 
 
「高官協議は、非核化交渉の前途多難さを浮き彫りにした。……北朝鮮は休戦状態にある朝鮮戦争の『終戦宣言』の実現にこだわる。……北朝鮮は交渉を自らのペースに引き込もうとする意図を隠さない。……非核化と直接関係ないカードを材料に米側の見返りを引き出し、肝心の非核化は先延ばしにしたまま経済制裁の解除につなげる思惑が透ける」(日経18/7/10) 
 
 さらに、日本経済新聞(18/7/10)は社説で、 
 
「北朝鮮外務省報道官は米朝協議で米国が完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)や核施設の申告・検証を一方的に迫ったとし『米国の態度は遺憾極まりない』と非難した。……北朝鮮が米朝協議で提起した米朝間の交流や朝鮮戦争の終結宣言は、地域の安全保障に直結するだけに慎重な対応を求めたい」 
 
と、東アジアの「安全保障」のために朝鮮戦争を終結させるべきでないとまで述べている。 
 
 冒頭で述べた通り、米朝首脳会談の共同声明では「新しい米朝関係の構築」や「朝鮮半島の永続的かつ安定的な平和体制の構築」、「朝鮮の安全の保証」が明確に宣言されており、マスメディアのこうした主張は、共同声明で確認された合意に反するものだ。しかも、交渉に当たったマイク・ポンペイオ合衆国国務長官は、朝鮮は非核化には「核兵器やミサイル、さらに核物質や生産施設、ウラン濃縮関連施設なども含まれる」という合衆国側の説明に「反論しなかった」と強調し、「協議に対する北朝鮮側の姿勢は誠実なものだった」と述べている(毎日18/7/10)ことから、現段階で合意を守ろうとしていないのは朝鮮ではなく、むしろ合衆国側であることがうかがえる。 
 
 マスメディアは米朝首脳会談での共同声明の「非核化」に関する合意以外は全て無視──しかも「朝鮮半島の非核化」を「北朝鮮の非核化」と偽って解釈──することで、合意を守らないのは実際には合衆国政府であるにもかかわらず、合意に忠実であろうとする朝鮮側に交渉が進まない責任を押し付けようとしている。そしてこれこそが、過去の朝鮮との非核化を巡る交渉で繰り返されてきたことではないか。 


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