2018年08月09日14時03分掲載  無料記事
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環境

世界の海岸を覆いつくすプラスチックごみ  G7は2030年目標に削減提唱、日本は承認せず 上林裕子

 昨年6月にイタリア・ポローニャで開催されたG7ボローニャ環境相会合共同コミュニケでは、「海洋ゴミは地球環境規模の脅威であり、共同で取り組んでいくべき問題」であることが確認された。今年6月にカナダで開催されたG7首脳会議では2030年までにプラスチックごみを削減するとの具体的な目標を掲げた『海洋プラスチック憲章』が提唱されたが、日本と米国はこれを承認しなかった。年間1000万トンを超えるプラスチックごみが海へと流れ込んでおり、太平洋の真ん中には日本本土の4倍もあるプラスチックごみの巨大な島(ごみだまり)ができているという。世界各地で、国や自治体、企業がそれぞれプラスチック削減策を打ち出しているのに、日本政府の動きは鈍い。 
 
■生産量が増えればごみも増える 
 
 世界のプラスチック生産量は2000年には1億7800万トンだったものが2012年には2億8800万トンと年々増大している。生産量の増大につれて海洋に廃棄されるプラスチックごみの量も増えてきており、2010年時点で年間480万〜1270万トンと推定される海洋プラスチックごみは、2025年には1000万〜2500万トンへと倍増するとみられている。 
 プラスチック生産量が多いのは中国、EU、米国、韓国、日本等だが、海洋への廃棄が多いのは中国、インドネシア、フィリピン、ベトナム、スリランカなどアジアの国々で、この5カ国で世界全体の海洋ごみの半数近くを占めているという(2010年)。 
 
■容り法でリサイクルに取り組む 
 
 日本は大量生産・大量廃棄で増え続ける廃棄物を減らそうと1995年容器包装リサイクル法を制定、ごみの発生抑制とリサイクルに取り組み始めた。1997年からペットボトルとビンのリサイクルを開始、2000年には紙容器、プラスチック容器のリサイクルも始まった。 
 
 容リ法が施行されてから20年余り、家電リサイクル法や食品リサイクル法のほか建設、自動車、小型家電に関するリサイクル法も整備され、資源の有効活用の体制が一応整った。 
 日本容器包装リサイクル協会によると2014年のプラスチック包装容器のリサイクル率は44.8%、ペットボトルのリサイクル率は82.6%となっている。スーパーなどでレジ袋を辞退する人は約5割にのぼるとしているが、コンビニ等で見ている限りレジ袋を辞退する人はほとんどいない。 
 
 プラスチックの生産量が増大すれば廃棄するごみの量も増え、海洋に流れ込むごみの量も増えていく。海洋の漂流ごみやマイクロプラスチックを減らすためにはプラスチックの消費を減らしていくことが必要になってくる。日本のプラスチック生産量は世界で第5位だが、1人当たりのプラスチック消費量は米国(117kg)、EU(96kg)に次いで第3位75kgで、日本を除くアジア国々32kgの2倍以上である。 
 ペットボトルのリサイクル率は高いが、一世帯当たりの年間ペットボトルの購入量は511本と多い。82.6%とリサイクル率は高くてもリサイクルされないペットボトルが17.4%あることになり、その数は49億7550万本で、東京都によると太平洋側の海岸に流れ着く漂流ペットボトルは日本製のものが多いという。海洋汚染を防ぐためにはリサイクルの前に購入量を減らすことが必要と思われる。 
 
■世界の海岸にプラスチックがあふれる 
 
 世界では年間約3億トンのプラスチックが生産されているがそのうち半分はレジ袋やペットボトル、食品の容器などの容器包装だ。1人が1日に排出するブラゴミは平均すると約80g、年間では30kgのプラスチックを消費していることになる。路上に捨てられたペットボトルや弁当の空き箱などは雨で洗い流され海に運ばれる。東京、カリフォルニア、マレーシア、インドネシア、フィリピン…世界中の海岸にプラスチックごみが流れ着いている。ハワイのほとんど人も住まないし観光客も来ないビーチもプラスチックごみでいっぱいだといわれる。 
 
 微細に砕かれたマイクロプラスチックが海に浮いているがその量はプランクトンの5〜6倍。魚はプランクトンとともにプラスチックを摂り込み、その魚を海鳥が食べる。 
 
 海洋調査で網にかかって死亡したハシボソミズナギドリ12個体を解剖し、消化器官を調べた東京農工大学の高田秀重教授は、「全ての個体から0.1〜0.6gのプラスチックが検出された。500gの鳥の胃の中にこれだけのプラスチック。人間に換算すれば60gのプラスチックが胃の中に入っていたことになる」。 
 
 海鳥の胃からプラスチックが検出され出したのは1970年頃からだが、1980年にはほぼすべての個体からプラスチックが検出されるようになったという。海鳥だけではなく魚や貝、ウミガメやクジラなど200種以上の海洋生物からもプラスチックが検出されている。 
 
■有害物質吸着し「有害プラスチック」に 
 
 海洋を漂流するプラスチックは海水中のPCBs、DDT、ノニルフェノール、ビスフェノールA等の有害物質を吸着する性質を持っている。環境ホルモンであるノニルフェノールや、残留性有機汚染物質(POPs)であるPCBsやDDTなどを周辺海水から吸着し、「プラスチックの有害化」が起きており、こうしたものを海洋生物や魚などが体内に取り込むことになる。 
 
 このままではプラスチックが海を覆い尽くすのではないか、漂っているだけではなく、海底に沈んでいるプラスチックのほうが漂っているものより多いとの意見もある。 
 私たちに出来ることは何か。高田教授は「使い捨てをやめること、コンビニでレジ袋をもらわないこと、ペットボトルを買わないで水筒を持っていくことなど、リサイクルの前に使用を削減することが第一」と指摘する 
 
(ジャーナリスト) 


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