2018年08月10日14時32分掲載
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環境
日本『海洋プラスチック憲章』承認せず 立ち遅れるプラ容器削減対策 上林裕子
増え続ける海洋プラスチックを削減するためには世界各国が本気で取り組む必要があると、6月にカナダで開催されたG7首脳会議は「海洋プラスチック憲章」を策定し、2030年と期限を定めて取り組むことを参加国に求めたが、日本と米国は承認しなかった。
EUは今年1月16日、「プラスチックの生産と使用方法を変えなければ、2050年までに海には魚よりも多くのプラスチックが存在することになる」として『EUのプラスチック削減戦略』を発表した。EU以外にも韓国、台湾、インド、オーストラリアなどがプラスチック削減への取り組みを表明している。さらに8月3日には南米で始めて、チリが『ビニール袋の商用利用禁止法』を施行するなど、プラスチック削減の動きは広がっている。それにくらべ、日本ではペットボトル入りコーヒー飲料が販売されるなど、プラスチック容器の利用がますます増えている状況だ。
■企業が率先、削減策打ち出す
1月16日、英国のスーパーマーケット「アイスランド」が2023年までに自社ブランドの製品からプラスチック包装を全廃すると発表した。同日、欧州委員会が『EUのプラスチック削減戦略』を発表しており、アイスランドの決定は、そうした動きを先取りしたものだ。アイスランド以外でもスターバックスやコカコーラ、マクドナルドなどが独自の対策を発表している。
いつまでも分解されないで残るプラスチック海洋ごみの問題は1960年代から魚や海鳥がプラスチック片を飲み込んだり、放置された漁網にオットセイが絡まるなどの問題として指摘されてきた。しかし、近年の世界各地の町や村から海に流れ込むプラスチック廃棄物は太平洋の真ん中に日本の4倍にもなるゴミだまりができるなど、一刻の猶予もないほど差し迫った問題となっている。日本も環境省が中心になって2009年から海洋プラスチックごみ削減のための省庁横断組織「海岸漂着物対策推進会議」を設置しているが、海洋プラスチックごみの元を絶つ対策が取られておらず、対策の立ち遅れが指摘されている。
■中国廃ペット輸入禁止でリサイクル不安に
国連環境計画(UNEP)は2016年ケニア・ナイロビで開催した国連環境総会で「海洋プラスチックごみに関する調査とマイクロプラスチックの削減」について決議している。全てをのみ込む大いなる海に、もうのみ込めないほど大量のプラスチックが世界中から流れ込んでいるのだ。
世界的にプラスチックの消費量は増えている。ペットボトルの消費量は10年間で2000億本/年も増えており、現在世界でおよそ年間5000億本のペットボトルが消費されているという。原因の1つは中国での需要増で、都市化が進みペットボトルの需要が増加、現在では世界の消費量の25%を占めているといわれる。
中国は長い間、日本の廃ペットボトルを大量に輸入していた。しかし昨年、習近平国家主席が経済をグリーン転換し、循環型発展関連政策を制定するとしてWTOに「固体廃棄物の輸入禁止措置」をとることを通知した。その後、環境保護部、商務部等の連名で、4類24種の固体廃棄物を禁止廃棄物目録に追加すると公布、2017年末日から執行するとした。この禁止目録の中に「生活由来廃プラスチック」としてペットボトルも含まれている。
日本のペットボトルリサイクルは中国への輸出も含めて成り立っていたわけだが、今後はこれまで中国に輸出していた分を国内でリサイクル処理しなければならず、できない場合は国内にごみとしてあふれ、海に流入する可能性もある。
■プラ包装削減推進のための政策必要
日本では1世帯当たりの平均ペットボトル購入量は年間511本といわれる。スーパーやコンビニでレジ袋を辞退したり、ペットボトルをやめてマイボトルを持って歩けばプラスチック使用量を削減することはできるが、毎日の買い物で購入する食品のほとんどはプラスチックのトレーにのせられプライチックフィルムに包まれている。プラスチックフィルムやビニール袋に入っていないものをさがしてもそうしたものはほとんどない。
英国のスーパーマーケット・アイスランドは2023年までに自社ブランド製品からプラスチックを全廃することを決めたが、こうした小売店をプラスチックを削減したいと考える消費者が支持することで海洋汚染の問題解決への1つの道が示されることになる。
EUは『プラスチック廃棄物削減戦略』について次のように説明している。「EUは循環型経済(サーキュラー・エコノミー)に移行し、プラスチック汚染から環境を保護し、成長と確信を促進する積極的な議題に変える」「EU市場でのプラスチック包装は2030年までに全てリサイクル可能となり、1回使用プラスチックは削減され、マイクロプラスチックの使用は制限される」「新たなプラスチック戦略はEUでの製品の設計、製造、使用、リサイクルの方法を変え、より持続可能な材利用が開発される新しいプラスチック経済への基盤を確立し、競争力と雇用創出のための新たな機会をもたらすとともに、パリ協定の目標達成のためにも貢献するだろう」。
EUがこうした政策を示したことで、アイスランドのような小売店が名乗りを上げやすくなっている。日本も政府が音頭を取って「ブラ容器削減」を政策として示すことで、業界も取り組みやすくなるはずだ。
業界の取り組みが進めば、代替包材や技術の開発など、新たな動きも生まれる。EUが取り組むサーキュラー・エコノミーとは単なる循環ではなく、環境を保護する一方で製品の設計、製造、使用、リサイクルのともに競争力を生み出し雇用創出の機会を生み出すものだ。日本政府も、プラスチックごみの削減のための効果的な政策を打ち出さなければ、世界の潮流に乗り遅れてしまうだろう。
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G7「 海洋プラスチック憲章」概要
(1) 2030年までに、すべてのプラスチック用品を再利用又はリサイクル可能なものとする。どうしても再利用やリサイクルが不可能な場合は、熱源利用等、他の用途に転換する
(2) 不必要な使い捨てプラスチック用品を極力削減するとともに、プラスチック代替品の環境影響にも配慮する
(3) プラスチックゴミ削減や再生素材品市場を活性化するため政府公共調達を活用する
(4) 2030年までに、可能なかぎり、プラスチック用品の再生素材利用率を50%以上に上げる
(6) プラスチック容器の再利用またはリサイクル率を2030年までに55%以上、2040年までに100%に上げる
(6) サプライチェーン全体でプラスチック利用削減に取り組むようにする
(7) 海洋プラスチック生成や既存ごみの削減技術の開発への投資を進める
(8) 2015年のG7で指摘した「投棄・廃棄漁業用品の回収作業に対する投資等」の実行を加速化させる。
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