2018年08月26日22時16分掲載
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社会
アメリカでもっとも自殺率の高い職業が農民だという英紙の記事 自殺率が軍人OBの2倍に達する職業に
昨今、日本では日本式の経営や技術が世界で活躍しているという報道や番組をよく見かける。僕自身もそうした番組を作っていたものだ。だが、そういう番組を見る人はともすると、日本VS 外国という観点でものごとを見てしまう傾向はないだろうか。農業においても外国産の農産物の流入に対する危機感から、米農民が外敵とまでは言わなくても憎きライバルであるかのように見えてくることはないだろうか。広大な大地があり、近代的な装備で効率的に農業を行う米農民はメキシコなどの周辺国を脅かす脅威的存在であるかのようにも見える。
しかし、英紙ガーディアンの報道によるとアメリカの農民も幸福とは言えないようだ。というのは記事によると、農民の自殺率が高く、統計では最も自殺率の高い職業だという。しかもしばしば自殺が多発すると報じられる軍人・兵士のOBの2倍にも自殺率が達するという。権威あるthe Centers for Disease Control and Prevention (CDC) による調査の結果である。
2008年のリーマンショックに端を発する金融恐慌が欧州にも波及したのち、フランスで酪農に携わる農民の自殺が急増して社会問題になったことは以前紹介した。あの時はフランスの農業金融が自己資本が目減りした結果、貸し渋りに転じたことが大きな底流をなしていた。自由貿易によって外国産の安いミルクなどがフランスに流入して価格が低迷する反面、不良債権が膨らむ銀行からつなぎ融資を受けることが難しくなっていたのだ。
では今回のアメリカの農民の自殺は昨今の経済と関係しているのだろうか。あるいはもっとより根深い現代農業の問題点があるのだろうか。いずれにしても、国境に分かれて憎しみあうのではなく、共生できる知恵を持つべきだ。
■Why are America's farmers killing themselves in record numbers? なぜアメリカの農民は記録的な数で自殺するのか (去年のガーディアンの記事)
https://www.theguardian.com/us-news/2017/dec/06/why-are-americas-farmers-killing-themselves-in-record-numbers
■2016年のCDCの情報公開 ”Suicide Rates by Occupational Group : 17 States, 2012” 少し前の2012年の米17州における自殺統計である。職業やグループ別に自殺率を調べている。
”Rates of suicide were highest in the following three occupational groups: farming, fishing, and forestry (84.5 suicides per 100,000 persons); construction and extraction (53.3); and installation, maintenance, and repair (47.9) ”
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