2018年08月27日17時34分掲載
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経済
米政策金利上昇の影響 トルコ、アルゼンチン、インド、ブラジルなど新興国の通貨が低下
米国はリーマンショック後を自ら演出するかのように、恐慌後に取られた様々な措置を廃止したり、緩和したりしている。リーマンショックでバブル経済がはじけてしばらく続いた政策金利のゼロ金利政策も終止符を打ち、2016年から0.25%くらいの小幅の利上げを繰り返してきた。今年に入ってすでに2回政策金利の利上げを行い、現在は1.75%から2.00%の目標を取っている。以下のリンクはFRBのセントルイスが発信している情報。政策金利の変化を示す折れ線グラフが表示されている。
https://fred.stlouisfed.org/graph/?g=eeA
米国の政策金利が上昇しているのはこのまま低金利を続けていたら、景気が過熱してインフレやバブル経済に再び陥ってしまうという懸念からだ。実はもっと以前から利上げに踏み切りたかったのだが、まだまだ景気回復は確かとは言えないとして慎重になっていた。しかし、ジャネット・イエレン前FRB(連邦準備制度理事会)議長は2017年1月に演説を行い、政策金利は2019年末までに3%まで引き上げるつもりだと公表していた。3%の金利はニュートラルな位置にあり、景気が過熱しても低迷しても通貨当局が介入しやすい位置にある。一方、ゼロ金利になってしまうと通貨当局が取れる方策が限られてしまう。そういうわけで、大きな変化がなければ0.25%×4回であと1%くらい利上げが行われそうである。ただし、トランプ政権になってFRB議長がジェローム・パウエル氏に代わり、FRBの政策金利の政策が変化することはありえるし、とくに景気を拡大したいトランプ大統領は利上げに反対しているらしい。
ニューヨークタイムズの4月27日付の記事”Economy too hot? Not to many workers"(景気が過熱?多くの労働者には実感なし)ではまだまだ庶民は景気が過熱しているという実感を持てない実情が書かれている。アメリカの失業率は現在4.1%とすでに完全雇用に近い状態にある(4%くらいはどのような景気状況でも諸事情から失業者は存在する)。イエレン議長は2017年1月の時点で失業率4.7%はすでに最大雇用を達成していると述べた。したがってこれ以上失業率が減るのは将来、インフレを再燃させることになりかねない、とした。
アメリカの政策金利が上昇することによって世界の投資家はインドやブラジルなどに投資した金を引き上げて再びドルを買い、米国債を買うなどの変化が加速する可能性がある。今年2回目の政策金利上昇直後のBBCの報道によると、新興国の通貨が軒並み売られて下がっていることがわかる。今後、さらに投資マネーが新興国から引き揚げていくと、経済危機が起きる可能性がある。とくにトルコとアルゼンチンは著しく下落を示しており、今年に入って通貨価値が20%以上ダウンしている。その結果、アルゼンチンは通貨防衛のために政策金利を40%へと大幅に上げざるを得なかったようだ。日本も現在、マイナス金利政策である。
■BBCの今年6月の記事 "Why US rates have a global impact"(なぜ米国の政策金利は世界経済に影響を及ぼすか)
https://www.bbc.com/news/business-44389203
■BBCの報道 Argentina raises interest rates to 40%(アルゼンチンが政策金利を40%に引き上げた)
https://www.bbc.com/news/business-44001450
■ジャネット・イエレンFRB議長の政策金利の見通し演説 1月18日 於サンフランシスコ Janet L. Yellen ”The Goals of Monetary Policy and How We Pursue Them”
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201701270414355
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