2018年08月28日21時50分掲載
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ITフロント
『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』(キャシー・オニール著、久保尚子訳)
現在進行中の“第四次産業革命”における革新的技術の1つ「AI(人工知能)」と、大企業を中心に“新たな資産”として近年注目を集めている「ビッグデータ」。
今やニュースで取り上げられない日が無いくらい、よく見聞きする言葉であり、ニュースでは好意的に取り上げられることが多い。しかし本著では、AI・ビッグデータの暗黒面(ダークサイド)に焦点を当てる。
幼い頃から数学を得意とした著者のキャシー・オニールは、コロンビア大学バーナードカレッジの終身在職権付き教授にまで上り詰めた後、米国ヘッジファンドの“クオンツ(高度な数学的手法で分析・予測を行う金融工学の専門家)”に転身。得意とする数学を金融界で実践的に生かす中で、2008年のリーマン・ショックに遭遇し、数学とテクノロジーが結び付いたソフトウェアシステムが金融危機を増幅させる場面を目の当たりにする。
著者は、その原因を「ソフトウェアシステムを構築する際、作り手の先入観、誤解、バイアス(偏見)がソフトウェアのコードに入り込むため」だと指摘し、有害な数理モデル(アルゴリズム)を「数学破壊兵器」(Weapons of Math Destruction、“大量”破壊兵器の「Mass」と“数学”の「Math」をかけた造語)と呼称して、実際に起こった事例を紹介しながら、有害なアルゴリズムによって下された審判に「貧しい者や社会で虐げられている者を罰し、豊かな者をより豊かにする傾向」があることを明らかにする。
AI・ビッグデータを動かすアルゴリズムが決して万能ではなく、多くの欠陥を抱えたまま使用されている実態が分かる内容だ。
映画『マトリックス』(監督:ウォシャウスキー姉妹)の中で描かれたコンピューターが人類を支配する世界も、AIとビッグデータが悪い形で組み合わされれば、あながち夢物語ではない・・・そんな気にさせられた。(坂本正義)
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