2018年08月31日03時10分掲載
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コラム
二コラ・ユロ環境大臣辞職で描かれたリベラシオン紙のWillemによる1コマ漫画 背景に暗躍する産業ロビイストが・・・
フランスの二コラ・ユロ環境大臣が辞職して波紋を呼んでいることはすでに書きました。なぜ今辞めるのかに関して、メディアでも様々な話が飛び交っていますし、ユロ氏自身のラジオインタビューも広まっています。
そんな中、リベラシオン紙はベテランの風刺漫画家 Willem の 1 枚の風刺漫画を掲載しました。森の高台に立つ3人の猟師の男たちが猟銃を手に話をしています。足元には撃たれたウサギが横たわっています。
●ユロの後釜は誰か?
猟師1「今に姿を見せるさ!」
これだけではわかりにくいでしょうが、これはユロ氏がラジオで話したことがもとになっています。ユロ氏は生物多様性を守るために狩猟への抜本的な規制を敷こうとして政府で話し合いの機会を持ったのですが、その時、招かれてもいない猟師のためのロビイストたちが会場に現れて自分たちに有利な政策をアピールしていたと言うのです。このことにユロ氏はかなり憤慨していました。もちろん、ロビイストの活動は狩猟に限らず、原子力であれ、農薬であれ様々なものに付随しており、業界の利益を守らんとしています。
Willem の漫画はあたかも猟師たちがユロ氏を辞めさせたかのような印象を与えますが、実際のところ、ロビイストの存在はユロ氏の辞任のバックにあったのではないか、と思われます。民主主義とは異なる形で欧州諸国の政策が作られていくのが今日の欧州連合の実態だからです。そして、ロビイストの存在とユロ氏の辞任を考えるスタジオの番組まで早々に作られました。" C dans l'air " という番組ではフランスにおけるロビイストの歴史まで語るという力の入れようです。「ユロ氏の辞任はロビイストの勝利なのか?」ということがテーマになっていました。この番組ではユロ氏の辞任に影響を与えたのではないか、と見られる当該ロビイストが登場しますが、彼は猟師の利益だけでなく、兵器産業も含めて報酬を与えてくれる様々な業界の利益を政界にプッシュしていく存在であると描かれていました。フランス国内だけでなく、欧州連合の拠点であるブリュッセルにはこうしたロビイストが多数滞在して業界に都合の良い政策をとらせるべく、直接働きかけたり、パンフレットなどを配ったりしていると聞きます。
最近、異常気候が加速しているように感じられます。すでに地球の気候は変わってきているということです。ユロ氏の辞任は政治のあり方に一石を投じており、それはフランスや欧州に限らない普遍的な問いかけとなっているようにすら思われてなりません。
※番組" C dans l'air "
https://www.youtube.com/watch?v=n4RyyzGF6cs
村上良太
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