2018年08月31日14時18分掲載  無料記事
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国際

トランプ大統領のイラン制裁の背景  イスラエルとイランの確執か  

  トランプ政権のイランとの核合意からの一方的離脱と、さらに8月から発動されつつあるイランへの経済制裁の再開はアジアの私たちから見ると、よく理解できないところがある。オバマ政権が2013年にシリアのアサド政権軍やシリアと軍事同盟を結んでいるイランへの空爆も視野に入れた緊張高まるギリギリの交渉の瀬戸際で実現にこぎつけたのがイランとの国交正常化への道だったからだ。1979年のホメイニ革命以来初めて成し遂げた国交正常化への道をトランプ大統領は一気に反故にしようというのだから驚きだ。 
 
  イランと米国の間に何が起きているのか? 
 
  少しさかのぼるが今年の2月23日付のニューヨークタイムズ国際版にそのヒントと思われる記事が掲載されている。"Iran builds a network in Syria as front against Israel "(イランがシリア国内にイスラエルと対峙する部隊のネットワークを構築中)という見出しだ。要点をかいつまんでまとめると、シリアのアサド政権を支援して兵員や兵器などで軍事協力してきたイランだが、イスラム国が壊滅状態となり、アサド政権も安泰になったにも関わらず、イランの兵士と派遣されたイランの兵士たちから軍事訓練を受けてきた諸外国から集結した兵士たちがシリアから立ち去らず、滞留していることがアメリカの軍部に脅威と映り、トランプ政権のイランへに圧力をかける方針の背景にあるようだ。特にイランから地中海へ抜ける帯状のイスラエル包囲網と見られているのである。 
 
  ニューヨークタイムズは米軍人や中東のアナリストらのインタビューなどをもとに、イラン政府が地中海までつながる軍事的な目的の回廊を構築中で、最終的にはレバノンからイスラエルを攻撃してきたヒズボラに代わる新たな対イスラエル民兵の育成をしているのではないか、と言うのである。イランはイラク戦争のあと、イラクに兵士を送り、シーア派の支援をして拠点を築いてきた過去があるが、シリアはイラクより西側に位置し、地中海に面している。そのシリアにイランが軍事拠点を持ちつつある。シリアはイスラエルに面している。それだけにイスラエルからするとイランからの脅威がイラク戦争の時よりもより一段と身近になってきたと映っているようだ。 
 
  もともと米国はイスラエルと特殊な深い関係にあったが、トランプ大統領の場合は娘婿もユダヤ系であり、米大使館をエルサレムに移すなどイスラエル寄りの姿勢がより顕著である。それを思えばイランへの厳しい路線の背景にはイスラエルとイランの確執があるのではないか、ということを思わせる。これはニューヨークタイムズのこの2月23日付記事を読んだ印象である。 
 
 
※2月23日のこの時点でトランプ大統領の国家安全保障の補佐官はH.R.マクマスター陸軍中将だった。マクマスター氏はNYTによると、すでにイランに対して行動を起こすべきだと主張していた。だが、トランプ大統領とマクマスター補佐官の間には国家安全保障観の違いもあり、その後、タカ派のジョン・ボルトン氏に交代させられた。ボルトン氏は対イランでも対北朝鮮でもよりイデオロギー的な意味での強硬派である。 
 
※CNNの報道 
What went wrong between Trump and H.R. McMaster? 
https://www.youtube.com/watch?v=ymjpo9KdBEY 
 
村上良太 


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