2018年09月27日19時17分掲載  無料記事
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核・原子力

東海第二原発の再稼働に反対するこれだけの理由

 本日(2018年9月26日)、原子力規制委員会は日本原電・東海第二原発の設置変更許可を行いました。 
 私たちは、これに抗議するとともに、以下の理由で東海第二原発の再稼働に反対します。 
 
1.危険な老朽・被災原発を動かす理由がない 
 東海第二原発は運転開始からまもなく40年を迎える老朽原発です。交換できる箇所を交換したとしても老朽化に伴い危険は増大します。 
 40年以上の原発は、よほどのことがない限り動かさないという「40年ルール」はいつの間にか骨抜きになってしまいました。 
 東海第二原発は、東日本大震災で被災しました。外部電源を喪失して3日以上かかって、かろうじて冷温停止し、それ以来停止したままです。地震によってどのような被害をうけているのか、すべてが確認できているわけではありません。 
 東日本では3・11後、原発は一基も動いておらず、電力供給は安定しています。今年、記録的な猛暑に見舞われましたが、節電要請はだされませんでした。福島第一原発事故は継続中であり、事故原因の検証も終わっていません。 
 こうした中、危険な老朽・被災原発を動かす理由がありません。 
 
2.「経理的基礎」がない/東電からの資金支援は論外 
 原子力事業者の「経理的基礎」は、審査の項目の一つですが、日本原電に経理的基礎はありません。 
 日本原電は、敦賀原発1・2号機、東海第二原発が動いていた2003〜2010年の純利益の平均は17億円で、東日本大震災以降2011年〜2017年の平均は25億円の赤字です。 
 2012年以降、発電量はゼロですが、東京電力、関西電力、中部電力、北陸電力、東北電力から、毎年1,000億円以上の電気料金収入を得て、延命しています。その額は、総額7,350億円にものぼります(2012〜2017年度)。 
 すなわち、日本原電の延命のための資金を、日本原電から1Whも買っていない全国の電力ユーザーが負担しているのです。 
 なかでも最も高額の基本料金を支払っているのは東電であり、その金額は2011年度〜2017年度は累計3,228億円にものぼります。この不明朗な実態自体、問い直されるべきでしょう。 
 とりわけ東京電力には、多額の公的資金が注入されており、本来、賠償や廃炉に全力を注がなければならないはずです。1Whも電気を買っていない日本原電に巨額の電気料金を支払い続けていることは、国民や被害者に対する「背任」行為なのではないでしょうか? ましてや、これ以上の財政的支援など論外です。 
 
3.「債務保証」?「電気料金の前払い」? 
 原子力規制委員会は、日本原電に対して、債務保証の枠組みとして、だれが債務保証を行うのか、その意思はどうかについて、書面で示すことを要求しました。 
 日本原電は2018年3月14日付で、東京電力と東北電力の二社に対して、支援の意向を文書で出すように求める書面を提出しましたが、ここで、債務保証のみならず「電気料金前払」という言葉を入れました。 
 この経緯は定かではありませんが、みずほ銀行などのメガバンクたちは、債務保証をつけた融資にさえ二の足を踏んだ可能性もあります。 
 いずれにせよ、日本原電がたとえ震災前の経営状況(平均17億円の黒字)に回復でき、それをすべて返済にあてたとしても、安全対策費1740億円を返済するのには100年以上かかることになります。 
 
4.事故の際の賠償は?〜「最後は国が補償」として事業者責任を放棄 
 前述のように、日本原電の財政状況は「火の車」状況です。万が一、原発事故を引き起こしても、賠償の備えは全くといってよいほどされていません。 
 現在の「原子力損害賠償法」では、原子力事業者が事故前に保険などで備える賠償金(賠償措置額)が1200億円となっています。 
 しかし、東電福島第一原発事故では、現時点で見積もられているだけで7兆円をこす賠償金が発生し、この賠償措置額を大きく上回りました。除染や事故収束にかかる費用も入れれば政府試算で21.5兆円とされており、この額はさらに上振れするとみられています。 
 日本原電も、少なくとも7兆円の賠償に備えるべきでしょう。 
 しかし日本原電は、今年3月7日の住民への説明会で「最後は国が補償する」と発言。事業者としての責任を放棄しています。 
 
5.パブコメ終了後も、2回も補正書を出し直し 
 日本原電の設置変更許可申請は、何度も補正書が提出されています。第4回の補正書に基づき、審査書案が作成され、それがパブリック・コメントにかけられました。 
 しかし、その後も2度にわたり補正書が出されています。第5回目の補正書が提出された9月12日のわずか6日後の同18日には、 第6回目の補正書が出されました。補正は第5回の補正書だけでも100箇所以上にも及びます。 
 修正内容については、少なくとも公開の場では議論されていませんし、パブコメ対象であった「審査書案」にも反映されていません。11月28日の工事計画認可、運転延長許可に間に合わせるために、「スケジュールありき」で審査を急いだためと思われます。 
 安全対策の内容にもかかわる修正もあります。原子力規制委員会は審査をやり直し、パブコメをやり直すべきではないでしょうか。 
 
6.懸念だらけの安全対策 
 安全対策には多くの懸念があります。以下はその一部にすぎません。 
 全長約1,400kmのケーブルのうち、「難燃ケーブル」もしくは「今後難燃ケーブルに取り換える」ものは一部でしかありません。 
 その他については一部防火シートでまく対策がとられようとしていますが、防火シートを通してケーブルが加熱され被覆材が熱分解を始めたり、条件次第では、火災がケーブルに伝わって拡がり、消火が極めて困難となるといった状況が懸念されます。 
 東海第二原発の格納容器はMARKII型。万が一の事故で炉心溶融が発生した場合、真下に水深1メートルの水を貼ることになっていますが、そこに高温の炉心が落下したときに、水蒸気爆発の危険性があります。しかし、審査では可能性が少ないため、無視してよいとされ、そのリスクが検討されていません。 
 赤城山噴火時における火山灰を50cmと見積もっていますが、このように大量の火山灰が積もった時に、果たして正常の作業ができるのでしょうか。原子炉建屋の強度不足や非常用発電ディーゼルの目詰まりなども懸念されます。 
 緊急時対策所は、免震構造になっていません。 
 
7.避難計画の実効性は誰も審査しない 
 東海第二原発30km圏には96万人が居住しています。万が一の事故の際、影響する範囲はさらに広がるでしょう。避難計画の立案は自治体まかせにされています。 
 茨城県が過去に実施したシミュレーションによれば、5km圏の住民8万人が、5km圏外に出るまでに30時間かかるとされています。 
 また、体が不自由な要支援者を避難させるための車が確保できないことから、茨城県は、病院や施設などに「屋内退避」させる方針です。しかし、いつ救援がくるかもわからない中での屋内避難は、要支援者を見捨てることにもなりかねません。 
 原発事故が単独で生じるのではなく、地震、津波、豪雨、積雪などと同時に生じる複合災害となる可能性は十分考えられますが、現在の計画をみる限り、複合災害には対応できていないのが実情です。水没、地震による破損、積雪により、避難道路が通行不可能になる事態も十分考えられます。 
 こうした避難計画の実効性を誰も審査することなく、原発の再稼働を容認するのは無責任です。 
 
以上 
 
国際環境NGO FoE Japan 
原子力規制を監視する市民の会 
 
(FoE Japanウェブサイト「新着情報」より転載) 
 
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