2018年09月29日23時27分掲載  無料記事
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コラム

アメリカの若者に社会主義旋風。さて、わが国では?  澤藤統一郎(さわふじとういちろう):弁護士

  昨日(9月25日)の赤旗、1面左肩に「米 若者が社会主義旋風」「格差問い予備選で番狂わせ次々」と大きな見出し。さらに3面にも大きな見出しの大型記事が続いている。「社会主義旋風起こす米国の青年」「わたしたちは資本主義の失敗をこの身で知った」「学生ローンに就職難、二大政党制への怒り…。」「国民の声を聞け」「多額の企業献金、ゆがむ政治」。そして、「『共産主義=悪』は古い価値観」。見出しを読むだけで、ほぼ内容かつかめそう。 
 
  アメリカ国内で若者の間に社会主義への共感が広がっていることは、以前から話題になっていた。民主党予備選でクリントンを激しく追い上げたサンダースの活躍が実に印象的だった。その「サンダース現象」は一過性のものではなく、2年を経て、11月中間選挙で再び旋風を起こすことになりそうというのだ。あの「サンダース現象」を担った多くの若者たちによって。 
 
  赤旗の記事は、現地特派員の記事。その一部を抜粋する。 
 
  「今中間選の新たな象徴は、28歳女性の「民主的社会主義者」です。2年前、サンダース氏の選挙運動に参加していた新人アレクサンドリア・オカシオコルテス氏は、6月26日、東部ニューヨーク州の下院予備選挙で、10期にわたり議席を保持し、民主党の次期下院トップと目されてきたベテラン現職を破りましだ。選挙戦で同氏は公立大学・学校の授業料無料化、国民皆保険制度の実現など、労働者目線の政策を訴え、36ポイント差で圧倒的劣勢とみられていた情勢を13ポイントの差をつけ逆転。予想外の勝利で政界に衝撃を与得ました。」 
 
  産経も引用しておこう。今年(18年)7月12日の「ウエートレスだった『非エリート』が現職を破った! 『怒り』の代弁者の勝利は続く」というタイトルの記事。 
 
  「お目当ては中間選挙に向けたニューヨーク州の民主党予備選(6月26日)で、重鎮の現職下院議員を破ったアレクサンドリア・オカシオコルテスさんだ。1年前までウエートレスとして働いていたヒスパニック系の28歳の女性が演じた大番狂わせは全国区のニュースとなり、時の人となった。選挙から数日後、同地区にある小さな選挙事務所を訪れると、オカシオコルテスさん本人がいた。「日本の記者です」と自己紹介すると、気さくな笑顔で迎え入れてくれた。取材は「時間が取れない」とNGだったが、チャーミングでカリスマ性のある雰囲気に、一瞬にして引きつけられた。 
  急進左派の政策を掲げるオカシオコルテスさんは、自らを労働者層の擁護者と位置づけ、エリート層の現職候補との対決を「人々とお金の戦い」との構図を描き、勝利をものにした。 
「移民・税関捜査局(ICE)の廃止」を訴え、トランプ大統領への批判も容赦ないが、皮肉なことに、2人には共通点も少なくない。反エリート主義で支持を伸ばし、大口献金に頼らない選挙戦を展開した。米国人は「怒り」を抱え、その代弁者が勝利する。大統領選からの潮流は変わらない。(上塚真由)」 
 
  この記事を書いた産経記者は、アメリカ社会の「非エリート対エリート」の対決構図を描き、「非エリートの怒り」が彼女の勝利を支えたとみた。さすがに産経の記事には、社会主義は出てこない。しかし、赤旗の見方は異なる。若者たちの不満が資本主義そのものの批判に向けられているという報道である。 
 
  最も大きな活字の見出しは、「わたしたちは資本主義の失敗をこの身で知った」というもの。「資本主義の失敗」には、やや違和感がある。資本主義とは人の手によって設計されたものではなく、歴史的なある段階で生成した経済構造の現実である。その欠陥はだれかの「失敗」に帰せられるものではなかろう。が、「私たちの世代は、資本主義の失敗を、身をもって経験している」と、若い活動家が言えば、まことに説得力のある言葉となっている。そうだ。資本主義は失敗したのだ。いまや、これに代わるものが必要なのだ。 
 
  赤旗は、アメリカ最大の社会主義組織DSA(「米国民主的社会主義者」)の紹介に紙幅を割いている。16年秋には8500人だったこの組織が、この9月に会員が5万人を突破したという。そして、サンダース旋風以来、DSAを物足りないとする若者のアメリカ共産党入党が増加しているという。 
 
  今年(2018年)8月のギャラップの調査では、資本主義を好ましいとした若者(18〜29歳)45%に対して、社会主義を好ましいとした者が51%にのぼっているという。これは、驚くべきことではないだろうか。 
 
  アメリカの若者は怒り、『共産主義=悪』の古い価値観に縛られずに社会主義運動に参加しつつあるのだという。その動きが、今、中間選挙を変えようといている。 
 
  さて、ひるがえって日本の若者はどうだろうか。アベに安全パイと思われているようでは情けない。ネトウヨが跋扈し、嫌韓・反中誌やアベヨイショ本が店頭に氾濫する現象は、アベ支持の国民が作り出したものだ。若者の投票行動が保守化著しいとされるのは、いったい何が原因なのだろうか。 
 
  若者よ、せめてだ。君の親くらいには社会に怒れ。国政を私物しているアベを批判せよ。社会主義・共産主義を好ましいとまでは言わずとも。 
 
(2018年9月26日) 
 
澤藤統一郎(さわふじとういちろう):弁護士 
 
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2018.9.26より許可を得て転載 
 
http://article9.jp/wordpress/?p=11211 
 
ちきゅう座から転載 


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