2018年10月14日18時25分掲載
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労働問題
アベノミクスと外国人労働者 「ルイスの転換点」とグローバリズム 2019年夏にアベノミクスの総決算を
安倍政権がいわゆる単純労働分野での外国人の就労受け入れを目指して入管難民法を改正しようとしていると報じられている。「新制度では、一定の技能を持つ「特定技能1号」と熟練者対象の「特定技能2号」が創設される。2号では家族の帯同も認め、条件を満たせば日本で住み続けられるようになる」(東京新聞)。東京新聞によればサービス業や農業、建設業などがそうした外国人労働者を使いたがっているとされる。
しかし、外国人の労働者が入国して働けるようになると、国内の労賃の引き上げが難しくなる可能性がある。アベノミクスが始まった年の2013年に日刊ベリタに書いたことだが、それは「ルイスの転換点」を覆すことにつながるからだ。「ルイスの転換点」は一国内の経済発展段階で、農村から都会に出て働く人が払底した時、その国の労賃が上昇し始めるというものである。セントルシアの経済学者アーサー・ルイス(Arthur Lewis,1915-1991)にちなんだ経済用語である。日本でも1960年代から70年代にかけて集団就職で農村から若者が毎年たくさん都会で働くために東京や大阪などの都会に移住した。しかし、その後、農村で働き盛りの若い世代が払底していく1970年代から1980年代になると、労賃がどんどん上昇していった。
アベノミクスは「三本の矢」を放って家計の所得を最終的に引き上げる政策だったはずだ。ところが外国から比較的低賃金で働く労働者を入れると、日本国内の労賃が上がりにくくなる。「ルイスの転換点」はグローバル時代の今、一国の発展理論としてとらえるのではなく、世界規模でとらえなくてはならない。そう以前書いたが、まさに途上国から労働者が絶えることなく入国するのであれば労働者の確保のために経営者側が労賃を引き上げたり待遇の改善をしたりする経済的な動機がなくなってしまう。何しろ、世界には1日2ドル以下で暮らしている人がまだ大量に存在しているのだ。国民の所得を上げるなら労賃が上がる構造を作らなくてはならない。ところが安倍政権は自らアベノミクスを否定する経済政策をとっているように見える。とくに工場移転で空洞化して労賃を下げられた製造業だけでなく、今後はレジ打ちやウエイターなどのサービス部門、すなわちこれまでならサービス部門だけは移転しないと言われていた分野でまで労賃の引き下げないし、現状維持が経営者にできるようになるだろう。
2013年に安倍政権は目標として「10年後に一人当たりの名目GNI(国民総所得)が150万円以上拡大する」と大盤振る舞いの発言をしていた。皆さんにもご記憶にある方がいるのではなかろうか。ということは5年後の2023年に2013年に比べて一人当たりの名目の国民総所得が150万円も上がっていることを意味する。たとえ名目GNIが単純に家計の所得とイコールではなかったとしても(つまり、税や社会保険費を引かれたとしても)なお、名目GNIが150万円も伸びるだろうか。仮に150万円の半分の75万円だったとしてもだ。よほどのインフレにならなければ無理だろうが、黒田日銀総裁が異次元緩和までしても2%のインフレ率さえ過去5年で実現できなかった。そもそも工場空洞化で製造業者が減少して流通業にシフトする過程で労働者の実質的な平均年収は下がってきた。エコノミストの森永卓郎が「年収300万円時代を生き抜く経済学〜給料半減が現実化する社会で「豊かな」ライフスタイルを確立する!〜」を世に出したのは2003年である。当時は年収300万円がインパクトのある低収入として語られていたのだ。今は300万円年収があったら嬉しいと言う労働者は少なくないのではないか。本来、労賃を引き上げないといけなかった流通業にまで新たに労賃を引き下げるか、現状維持できるための法改正を自民党は目指しているのである。さらに来年は消費税を引き上げると安倍首相は言っているからますます景気は悪くなるはずだ。
・「第三の矢」の不発
・非正規労働者の増加
・消費税の上昇
・グローバル化に伴う空洞化
・少子高齢化
・自由貿易協定で安い商品の海外からの流入
・軍事費の増大
・外国政府への巨額のばらまき
・国の債務の増大
・子供の貧困
第二次安倍政権以後、こうした要素が抜きがたくあるように思える。非正規労働者は増えているのではなかろうか。アベノミクスで製造業はいったいどのくらい日本国内に戻ってきたのだろうか?来年は日本国民がアベノミクスを冷徹に見つめる年になるだろう。イデオロギーは何であれ大衆の暮らしが安倍政権で良くなったか、ということである。良くなったと考える人とそうではない人がきちんと議論できる場を今年から設けていく必要がある。行政府の長と言っても公務員はすべて公僕なのだ。
新自由主義におけるグローバリズムが進行すると、外国の労働者が国内労働者に何らかの形で(工場移転する場合も、外国から労働者が入ってくる場合も)とってかわる形となるため、その国民の労働者の中に外国人労働者に対する不満や恨みが蓄積しがちだ。それが排外主義につななると同時に、ナショナリズムを駆り立て、自民党などのナショナリズムの政党を後押しする。しかし、ナショナリズムをうたう政党がグローバル化を推進しているのであり、そこに矛盾があるのだが、ナショナリズムとグローバリズムが皮肉にも補完する関係になっている。
■安倍首相 ごまかし論議
「国民の年収150万円増やす」
「国民総所得」 →すりかえ→ 「国民平均年収」(赤旗)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-15/2013061501_03_1.html
■アベノミクスへの誤解 「10年後に年収150万増」のウソ?…名目GNIのカラクリ
https://biz-journal.jp/2013/07/post_2524.html
■グローバル時代の「ルイスの転換点」 〜アベノミクスの弱点〜 村上良太
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201306070012005
■非正規雇用、ついに4割に
https://www.nippon.com/ja/features/h00133/
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