2018年12月21日13時20分掲載
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検証・メディア
韓国徴用工訴訟 なぜマスメディアは河野太郎の国会答弁と日本政府の主張の矛盾を追求しないのか Bark at Illusions
外務大臣の河野太郎は11月14日の衆議院外務委員会で、日韓請求権協定(1965年)によって「個人の請求権が消滅したと申し上げるわけではございません」と明言した。1991年8月27日の国会で当時の外務省・柳井俊二条約局長が日韓請求権協定は「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」と答弁していることについての認識を尋ねた共産党・穀田恵二議員に対する答弁だ(赤旗18/11/15)。徴用工の問題は日韓請求権協定によって「完全かつ最終的に解決済み」であり、日本企業に元徴用工への賠償を命じた韓国大法院(最高裁判所)の判決は「国際法違反」だと主張する日本政府の根拠が崩れる重大な発言だが、このことについてマスメディアはほとんど報じていない。なぜマスメディアは河野太郎の答弁と日本政府の主張の矛盾を追求しないのか。
個人の請求権が消滅していないことを認めた河野太郎の重大な発言を無視するマスメディアは、14日の河野太郎の答弁以降も、韓国最高裁判決は国際法違反だという日本政府の主張が正しいという前提でニュースを伝えている。
例えば、三菱重工業に元徴用工への賠償を命じた11月29日の韓国最高裁の判決について伝えたNHKニュース7(18/11/29)とニュースウォッチ9(18/11/29)は、韓国最高裁は10月にも日本企業に賠償を命じる判決を出しており、日本政府が「国際法違反」だとして韓国政府に「是正」を求めていることを伝えた上で、河野太郎が
「桁違いの影響を日韓関係に及ぼす極めて重大な出来事である。日本の外務大臣の発言がきついとかきつくないとかいうレベルの話ではなくて、一刻も早く、韓国政府には是正措置をとっていただきたい」
と今回の判決に抗議し、
「韓国政府が措置を取らないなら国際裁判などに訴えざるを得ない」
と述べたことを紹介してニュースを結んでいる。
しかし外務大臣自身が日韓請求権協定で個人の請求権は消滅していないと認めているにもかかわらず、一体何を根拠に「国際法違反」だと言うのか。NHKはそのことについて全く説明がない。
「国家間の条約で個人の請求権を一方的に消滅させることはできないとして、人権、人道の観点で強制動員問題の解決をめざす取り組みは国際的潮流」(同志社大学太田修教授 朝日18/11/23)であり、1998年に戦時中の日本の強制労働は強制労働に関する条約(1930)に違反していると結論付けた国際労働機関(ILO)の専門家委員会は日本政府に強制労働者の請求に応えるよう度重ねて求めている。それを無視して日本の侵略戦争や植民地支配の被害者の救済を拒んでいる日本政府こそ「国際法違反」だ。
さらに韓国最高裁の判決が国際法違反だという日本政府の主張には根拠がないことが明らかになっているにもかかわらず、未だに加害者である日本政府が被害国側の韓国政府に対して国際法違反を是正しろと要求し、マスメディアは日本政府の要求が正当であるかのようにニュースを伝えている。こんなことがまかり通るとは、日本の社会は狂っているのか。
「日本の外務大臣の発言がきついとかきつくないとかいうレベルの話ではなくて」というのは、その通りだろう。事は外務大臣一人の資質にとどまらず、日本社会そのものが問われる事態になっている。
個人の請求権が消滅していないことを認めた河野太郎の答弁と日本政府の主張の矛盾を追及することを怠り、韓国最高裁判決は国際法違反だとヒステリックに叫ぶ日本政府の主張を無批判に拡散することで、マスメディアは日本の侵略戦争や植民地支配の被害者を侮辱するとともに、日本の国際的評判をも貶めている。
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