2019年01月18日03時01分掲載
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コラム
日本外交の失敗続きと報道統制の関係性
北方領土をめぐるロシアとの交渉で、ロシアはまず北方領土の主権がロシア側にあることを前提にせよ、と伝えてきたと報じられた。これは日本外交の足元を根本から突き崩す要求であり、もしそれをのんでしまったらいったいどのような理屈で北方領土返還を求めることができるというのだろう。それぐらい日本外交はがけっぷちまで押されていることに日本国民は驚いた。というのも、これまで安倍首相とプーチン大統領は非常にいい関係にあると再三、日本の主要メディアで報道されてきたからだ。このことは北朝鮮との交渉においても日本政府だけが蚊帳の外で話が他国でどんどん進められていたことに驚いた時と同様であろう。
こうしたことは何を意味しているのだろうか、と考えてみると、1つの仮説が浮かんでくる。安倍政権があまりにもメディア統制を進めてきたために、正確かつ迅速な情報が政府に集まらなくなっているのではないか、ということである。というのはメディアの第一線が自由に報道できる国であればそこから政府にも質量ともに有益な外交情報が還流するからである。ところがこの6年間、外国の情報をできるだけ国内に流させないようなバイアスをかけてきたために、その方面の報道が衰退し、何であれ情報がそもそも政府に集まってこなくなったのではないか、ということである。たとえば内閣官房機関である内閣情報調査室の任務の柱の1つが新聞の切り抜きだが、もはや切り抜くべき有益な国際情報が国内紙にどれほどあるだろうか。しかも仮にあったとしても国内の新聞に出てくる情報は大半があまりにも遅く、それを参考に外交していたのでは手遅れだ。イエスマンの持ってくる情報だけ信じているような企業はまずつぶれる。
真実を伝える国際情報がないことをいいことに政府の活躍ぶりを目立たせてきた日本政府だが、今、ここにきてそのつけがとうとう大衆の目にもくっくり見えるほどに顕在化してもう粉飾に限界がきているのではなかろうか。そのことは日本国民の安全に直結する大きなリスクとなってきている。
武者小路龍児
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