2019年01月19日22時06分掲載  無料記事
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コラム

安倍政権でやはり進んだ日本のソ連化    

  安倍政権が発足して1年目の2013年11月に筆者は「日本がソビエト化する日」という文章を書いた。あれから5年と2か月、悲しいかな日本のソ連化は予想通り進んでいる。では日本のソ連化とは何か。当時の拙稿の一部を採録したい。 
 
 <安倍政権が成立させようとしている特定秘密保護法案も究極的にはソビエト型官僚主義時代の始まりと言えるのではないか。秘密が何かわからないことは国民の真実探求への道を封じるものである。それはまさにソビエト化への道であろう。あの時代のソ連の代表的新聞は「プラウダ」(真実)という名前だった。だが「プラウダ(真実)」は真実よりもソ連共産党の見解を伝えるメディアだった。安倍政権の特定秘密保護法案が可決されれば今後はジャーナリズムが役人の腐敗を追求することも不可能になる。これも日本のソビエト化を進める大きな要因である。ソビエトはその高邁な理想とは裏腹に役人への賄賂が横行する役人天国だったからだ。ソ連で一部のエリート役人とその子弟だけがこの世の春とばかりに出世コースを独占し、贅沢三昧するのを見たらマルクスは悲しんだだろう。ジャーナリズムから腐敗を追求されることもなくなった官僚は新しい貴族になったのである。 
  問題はジャーナリズムだけではない。市民が健全な精神を失えばいずれはソ連と同様に国民経済も停滞するはずである。デフレ時代の日本人のメンタリティは<できるだけ買わないでおこう、買うとしたらできるだけ後で買おう>というものだった。もし特定秘密保護法案が可決された後は次のようになるのではないか。 
  「波風立ちそうな事は何もしないでおこう。やるとしても誰かが先にやるのを見届けて安全だったらやろう。」> 
 
  実際には当たった面とそうでない面とがあった。まず当たった面としては一定数の官僚が腐敗して国民のために働くことをやめ、政権の下僕になってしまったことである。しかし、賄賂が軸と言うよりも日本の場合はむしろ保身のためと言った方がいいのかもしれない。毎日のように報じられている官庁が統計データを改ざんしたり、誤りのデータを使っていたり、公文書を組織的に改ざんしたり破棄したりと言った事件である。もはや日本の役所では倫理の底が抜けたかのようだ。いや、倫理と言うよりプライドがなくなったのだろう。特定秘密保護法ばかりが原因ではなく、内閣人事局の設置により、官僚の出世が政府に握られてしまったことがむしろ大きかった。民生よりも一身の栄達を重んじる官僚が多いことを意味する。 
 
  もう一つ、当たっていなかったこともある。それはジャーナリズムが意外にも安倍政権の横暴に対して奮闘していることだ。確かに大手メディアは政権に忖度している。メディア幹部が首相としょっちゅう寿司を食ったりフランス料理を食ったりしてだらしない。NHKに至っては多くの人々から安倍首相の広報機関と言われている。戦後こつこつ築いてきた伝統を全部どぶに捨てたように見える。しかし、それでも一部に安倍政権の真実に鋭く迫る記者たちが何人か存在して、新聞や報道の価値を維持してきた。これは5年前に想像できなかったことだ。日本崩壊を食い止めるのはこうした人々に違いない。 
 
 
 
■ロシアから見る特定秘密保護法案  〜日本がソビエト化する日〜 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201311241930270 
 
■大下英治著 「安倍官邸『権力』の正体」   安倍政権の4年間を振り返る 
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