2019年01月27日14時19分掲載
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労働問題
「官製春闘」はフェイク? 連合・神津会長のマスコミ批判に思う 戸塚章介
連合の神津理季生会長が、自己のブログ(1月21日付)でマスコミの春闘報道に文句たらたらである。「神津理季生の『おやっ?』と思うこと〜労働組合とメディア論」「―春闘とマスコミ報道の奇妙な関係―」。神津氏はマスコミの春闘報道に「喜べない」し、「神経がとがる」のだそうだ。
マスコミは「政労使春闘」と言うべきところをありもしない「官製春闘」と呼ぶ。それ自体がフェイクだと断じる。「世の中の多くの企業経営者にとって、安倍総理が『賃上げを』と言ったところで『はいわかりました』という経営者がどれだけいたのでしょうか?」。日本で200万人を超える社長さんの大半は「自分は関係ない」と、賃上げに踏み切らなかった。つまり官製春闘は存在しなかったというわけ。
官製春闘という言葉は団交当事者を馬鹿にしている。春闘をそのように表現するマスコミを労使当事者は嫌悪する。対照的に政府には心地よい。賃上げされた企業の組合員は「総理のおかげで賃金が上がった」という潜在意識が刷り込まれる。官製春闘というネーミングは政府とマスコミの蜜月を示すものだ。
このように「マスコミ批判」を一渡り展開した上で神津氏は、「ある全国紙系の経済紙」の記者が太田薫旧総評議長の「春闘の終焉」という言葉を持ち出したことへ腹を立ててぶんむくれる。「大手が威勢のいい金額要求をすれば、世の中全体の賃上げが向上」するのか、と開き直る。そんな発想は「トリクルダウン的思考」だと一笑に付す。「(そういう発想が)失われた20年間を生じさせてしまった」。
最後に、連合は中小企業の賃金を上げ格差を縮めるために「賃金の上げ幅」でなく「絶対水準の引き上げ」にこだわってきた、と自画自賛する。「ここ数年、連合の中では中小の賃上げ額が大手の賃上げ額に年々近づいており、肉薄をしています」。へえーそんな話おれは初めて聞いた。
神津会長に言いたい。連合も労働組合なら、労使の団体交渉をどう考えているのか。そもそもあなたは団交をやったことがあるのか。団交で要求を勝ち取るためには何が必要か。憲法には団結権、団体交渉権、団体行動権の労働三権が明記されているのを知っているのか。そんな権利を振り回すのは「インフレ時の春闘メカニズム」とか言ってはじめから放棄してはいないか。じっくり考えてほしい。
今年の参院選が終われば神津連合会長の任期が切れる。次は誰がなるのか。少しはましな人が出てきてほしい。
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