2019年02月02日11時27分掲載
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文聖姫『麦酒とテポドン』 「残酷物語」でない北朝鮮の普通の人びとの暮らしをルポ
著者・文聖姫さんは、在日コリアン二世。父は朝鮮時報記者から朝鮮総連国際部の幹部。日本の記者たちとも本音でつきあい、葬儀には日本の多くの人々が参加した。母は朝鮮画報の編集者などをしていたという。
文さんはそんな家庭で小学校から高校までは朝鮮学校へ。日本の大学に進んだが在日本朝鮮留学生同盟の活動に参加し、在日学生代表として北朝鮮を訪問。“愛国者”になった文さんは朝鮮総連記者として、平壌特派員も経験した。
そんな文さんは、2002 年9 月の小泉訪朝に際して金正日総書記が拉致を認め謝罪したことに大きなショックを受けた。記者として北朝鮮が言うとおり、拉致ではなく行方不明者と報道してきたことが完全否定されたからだ。悩みながら仕事を続けたが、2006 年12 月20 日の45 歳誕生日に、20 年勤めた朝鮮新報社を退職した。
「私は拉致問題をきっかけに朝鮮新報を辞めたが、なぜこんなことが起きたのかをずっと考えてきた。突き詰めれば、問題は朝鮮半島に冷戦構造が残っていることにあるのではないか。だったら、朝鮮半島の冷戦構造をなくす方法を考えてみてはどうだろう。そんな思いから研究者になろうと考えた」(プロローグ)
そして2008 年から東京大学大学院の韓国朝鮮文化研究室に入学し、2017 年7 月、「北朝鮮における経済改革・解放政策と市場化」論文で博士となった。ここまでくるのに7年かかったという。
そして本書執筆の動機を次のように書いている。
「北朝鮮といえば(略)核兵器やミサイル、拉致、飢餓や独裁……(略)だが、北朝鮮の人々が何を考え、どのように生活しているかを伝えてくれるものは少ない。ほとんどが指導部の政策を分析するものか、庶民の生活を描くものでも、脱北者をソースにした飢餓や生活苦などマイナスイメージを強調したものが目出つ。まさに『残酷物語』。だが、果たしてそれが北朝鮮の実像をすべて伝えていると言えるだろうか。大学生時代の1984 年に初めて訪朝して以来、2012 年までに計15 回北朝鮮を訪れた。(略)常に関心を持って追求していたのは、北朝鮮の一般の人々の普通の暮らしだ。その国の人々の喜怒哀楽を知らずして、その国の実像を知ったとは言えないだろう。(略)本書では、そのような北朝鮮の普通の人々の暮らしぶりや考えをできるだけ伝えたつもりだ。書くにあたっては、自分の目で見たり体験したり現地で聞いたりしたことだけに限定した。取材源のはっきりしない伝聞情報は、特に北朝鮮のような国について語る際には注意が必要だ。本書を通じて、リアルな北朝鮮を知ってもらえば幸いだ。」(プロローグ)
中身を紹介する余裕がなくなった。後はぜひ読んで欲しい。(福島清)
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