2019年02月03日23時04分掲載  無料記事
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コラム

アベノミクス提灯報道に関わってきた報道デスクたちにとって今発覚している統計不正とは?

  多かれ少なかれ、すべてとは言わないまでも第二次安倍政権発足来、多くの新聞やテレビがアベノミクスを称える報道をしてきた。今頃、「実質賃金の重要性が認知されてきた」、などという驚くべき話が飛び交っているのも、この6年間、努めて経済の実相を報道しないようにしてきたからだろう。 
 
  たとえば2015年6月初旬に大手新聞が4月の実質賃金が上昇した、と大きく報道したことがあった。ついにアベノミクスの成果が顕在化したかのようなニュースだった。しかし、6月の末に厚労省は実際は4月の実質賃金も前年比でマイナスだったと修正した。とはいえ、ニュースでは6月初旬の大々的な報道に比べて修正の記事は小さく、路傍の名もないつつましい花のようなものだったように記憶している。この時点で、24か月連続で実質賃金はマイナスだったのだ。こうした報道の姿勢の由来は、必ずしも政治的な意図というだけではなかったのかもしれない。大手メディアの社員の給与は庶民の2倍や3倍、というところが多いはずである。公開された自社株を持っているメディア企業の人はなおさらアベノミクスで儲かっていたはずである。彼らが年収100万円や200万円で暮らしている多くの庶民の暮らしの実相を知る機会は少ないのではなかろうか。 
 
  折しも2015年のこの頃、安倍政権は憲法9条の解釈を憲法学者の大半の反対を無視し、政府で一方的に変えて集団的自衛権行使を容認し、その上に立って安保法制を制定しようとしていた。デモや反対する市民の弁論があちこちで行われた頃のことだ。第一次安倍政権は安倍首相の突然の辞任で終わったが、第二次安倍政権の命綱がアベノミクス、という景気浮揚策だった。だからこそ、この重要な時期に国民をミスリーディングした報道の罪は深い。戦争は嫌だが、背に腹は代えられない、という人も少なくない。カツカツの暮らしをしている庶民がそう思ったとしてもとてもその人を責めることはできない。安倍首相のおかげで実質賃金が上昇しているというのだから、何とかしてこれからも支持しようと思った人は多かっただろう。 
 
  そのことを考えると、新聞やTVがどこまで統計の問題を報じることができるのか、そこが見どころだと思う。というのも、多くの大手メディアが安倍首相の会食仲間になっているからだ。アベノミクスの報道の仕方について、安倍首相との夕食会がどのような影響力をもたらしたのか、報道メディア内部からの報道に期待したい。というのもメディアのエリートたちが厚労省の統計の問題に気づいていなかったとはなかなか思えないからである。景気が上昇している、という報道が〜たとえウソであったとしても〜実際に景気をよくする、というような魔術をかけられていなかっただろうか。 
 
 
■マスメディアは自社の幹部が中華料理屋で首相と何をやっていたのか、まずそれを書くことから 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201702281448222 
 
■新聞社は識者を集めた紙面審議会などより、自社の記者同志で首相との会食や記者クラブ報道の是非を論じるべきではないか 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201703070027132 
 
■グローバル時代の「ルイスの転換点」 〜アベノミクスの弱点〜(2013年6月の記事) 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201306070012005 


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