2019年02月19日22時19分掲載
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政治
国会パブリックビューイングを見に行く 3 政府統計不正問題 緊急街頭上映(新宿駅西口地下) 2019年2月16日
2月16日土曜日、東京の新宿駅西口地下で国会パブリックビューイング(国会PV)の緊急街頭上映が行われた。国会PVとは国会審議を公共の場でともに見る、という昨年始まった市民運動である。この日のテーマも厚生労働省の毎月勤労統計のデータの不正問題だ。今回の国会審議は主に2月13日の衆院予算委員会での質疑である。
https://www.youtube.com/watch?v=FJv4MwGPByY&t=1134s
いつもの上西充子法政大学教授(国会PV代表)とともに解説に加わったのは明石順平弁護士だ。明石弁護士は「アベノミクスによろしく」や「データが語る日本財政の未来」などの著作を通して現政権の経済政策の失敗を豊富なデータで検証してきた人である。明石氏は明快にアベノミクスと賃金の関係についてこう語った。
明石順平弁護士「まず実質賃金ってなんだろうって、そこらへんからわかっていない方もいると思いますのでちょっと説明しておきますね。要するに物価を考慮した賃金のことです。みなさんの給料がたとえば倍になったとしましょう。わーい、と喜んだんですけど物価も倍になっちゃったらどうですか?変わんないですよね。そうなんですよ、賃金って物価を考慮しないと見えないんです。そこで名目賃金指数、これは見たまんまの賃金の価格でそれを指数化したものですが、消費者物価指数で割って実質賃金というものを出すんですね。そしてこれが、アベノミクスの失敗の象徴なんです。2014年に消費税を増税しましたよね、同時にものすごい円安になりましたよね。増税に円安をかぶせたから、ものすごい勢いで物価が上がっていったんですよ。これ、みなさんね、知らない人がたくさんいるんですけど、日銀のせいで。日銀の目標って前年比2%、そして消費税の影響を除くって言っているんですね。消費税の影響を入れたら2014年の1年で3.3%くらい上がっているんですよ、物価が。ものすごい上がっているんです。で、2018年と2012年と比較するとどれくらい上がっているか、6.6%も上がっているんですよ。で、今回問題になった賃金、あんなにかさ上げしましたけど2.8%しか伸びていないんです、この6年で。つまり物価の上昇が賃金の上昇を大きく上回っているんですね。だからみなさんの給料は落ちているんです」
アベノミクスと言えば給料が上がった、という話がまずいろんな形で報道されてきてなんとなく経済が上向いたような印象を持つ人は少なくなかったに違いない。しかし、庶民の感覚からすると、食料品は値上がりするし、いろんな形で暮らしは厳しさを増してきたのではなかろうか。だからこそ多くの人は自分の実感と新聞で報じられているアベノミクスの華やかな報道とのずれを感じていたのではないかと思う。そういう意味で明石弁護士の明快な話はとてもインパクトがあったし、今回の厚労省の統計不正のバックグラウンドを説明するものだった。
国会PVの映像では大串博志議員(立憲民主党 無所属フォーラム)が安倍首相に、安倍首相の大きな影響力が毎月勤労統計にも影響を与えたのではないかと話す。それに対して安倍首相は当時の経済指標は(他の)すべてがいい数字を示していた。だから、厚労省の毎月勤労統計を操作する必要などそもそもなかったのだ、と言った意味のことを話す。だが、当時は実質賃金がなかなか上がらず、安倍首相は2015年9月は自民党総裁選の年でもあり、必死で実質賃金を上げて成果を示したかった可能性はないと言えるだろうか。
大串議員の質問シーンのあと、再び小川淳也議員(立憲民主党・無所属フォーラム)が登場して、前回に続いて、非常に緻密な真相追及を続けていく。とくに目が離せなかったのは以下のくだりだった。毎月勤労統計の取り方を2018年1月から改定した際に、日雇い労働者が統計から外されてしまったことである。日雇い労働者の割合は全体の1%程度だとされる。
小川淳也議員「労働者数について1%の変動があるということは認めている。統計委員会はこの点、かなり懸念していましてね。定義変更に伴う賃金等への影響について十分な情報提供を行えと統計委員会の答申の中で書いています。そして私が議事録をよく調べてくることは前回おわかりいただいたと思うんですが、この点は何度も何度も統計委員会の部会で議論されているんですよ。そしてここで幾つか紹介したいと思いますが、ある議員はこの定義変更に伴う評価をしていかないとまずい。急に定義の変更で数字が変わったのか、それとも実体経済の影響で起きたのかがわからない。それは統計としての役割が半減するという指摘をしている委員がいます。だいたい労働者数で1%、賃金で最大0.3%考えられますよ、という指摘があったことは前回ご紹介しました。で、これに対する厚労省側の答弁なんです。厚労省の当時の石原室長は『かしこまりました〜2016年11月24日〜方法論も含めていろいろと検討してまいります』と言っているんですよ。翌年1月にも言っています。定義変更のインパクトが大きいのか、小さいのか、これを示すべきだ、という問いに対して石原室長は『かしこまりました。賃金基本構造統計なりを使って評価したいと考えます』。責任が生じていますよ、これ。根本大臣、今みたいなご答弁じゃダメです。統計委員会の懸念をこういう形で反論して振り切ったんだから、きちんとこの定義変更に伴う影響は試算して国民に示します、と。もう一回答弁してください。」
外された日雇い労働者がわずか1%だったとしても、もしその影響が0.3%なら侮れない数字であろう。実質賃金の伸び率というものは目下、せいぜいコンマ( )%という世界の話だからだ。統計委員会が議事録で日雇い労働者を除外する場合はその影響がどのくらいかを試算して、統計をどうするかを決めるべきだと指摘していたのはその通りだろう。ところが担当室長は「かしこまりました」と繰り返し答えながら、実際にはその影響がなんだったかが今もって不明のようだ。
今回の国会PVは前回に続いて、統計不正の問題を扱ったが、前回と同様に面白く、勉強になった。国会審議が不発だった、というような話をネットか何かで見たような気もするが、どうしてどうして、こうして解説付きの映像で見ると、非常に鋭い追及が行われていたことが理解できた。
村上良太
※ 以下は2015年に筆者が日刊ベリタに寄稿したもの。2015年当時を振り返ると、実質賃金が上がっているという状況を必死で示したがっていたことが透けて見える。
■厚労省が修正 実質賃金は4月も増えていなかった 6月初旬の大々的報道は何だったのか? 実際は24か月連続マイナスだった…
(2015年6月)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201506260415415
■戦争と買い物 〜GDPの実質成長率が増加したと報じているが物価上昇を差し引いた実質報酬は去年に比べて低下 しかし、新聞はなぜかこの点に触れず… すでに大本営発表?〜(2015年6月)
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201506181639104
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■国会パブリックビューイングを見に行く その2 〜国会を市民に『見せる』(可視化)から、市民が国会を『見る』(監視)に〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201902111906321
■国会パブリックビューイングを見に行く
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201902062355103
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