2019年02月27日22時02分掲載
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ユルゲン・ハーバーマス著 「人間の将来とバイオエシックス」 その2
ドイツの哲学者ハーバーマスは「人間の将来とバイオエシックス」の中で21世紀に人類が2種に分裂する可能性を指摘していた。わかりやすくたとえれば、エリート種と在来種にである。
1%の富裕で力を持った人間がその他の99%に対する優位を恒久化する方法は99%を「動物」に区分してしまうことだろう。そして、もし99%が動物に格下げされたなら、環境への負荷を減らすために地球上の人口を一気に減らすこともできるだろう。こうした道を開くのが遺伝子操作である。99%を遺伝子操作しなくても1%が遺伝子操作を子孫に施せば2種に分かれることは起きうる。新しい種とは過去の人類の欠陥を克服できるように、さらに未来に順応できるように遺伝子操作でデザインされた人類である。すでにデザインされた赤ちゃんは多数生み出されている。
遺伝子操作の本当の怖さは、簡単に新しい種が生み出されることであり、新人類が生み出され、旧人類を絶滅させてしまう可能性である。ネアンデルタール人が絶滅したのには長い年月がかかったが、人類が絶滅するには1年で十分だろう。ハーバーマスは「人間の将来とバイオエシックス」で生物的な面ばかりでなく、「遺伝子操作された」という心理的な面が、次世代の人間たちに大きな影響をもたらす可能性を指摘していた。たとえ、種としては生殖可能で分化していなかったとしても、心理的に異種と自己規定する新しい人々が登場する可能性についてである。
すでにこの国ではエリートと非エリートでその生活も職種も収入も学歴も大きな差がつきつつあり、このままいくと不可逆になりかねない。すでに99%の人々は無気力になり、政治的にも無関心になり、支配をしぶしぶも受け入れているように見える。ハーバーマスは上のようなことまで具体的には想像で描きこまなかったが、人類の「類」という概念が今世紀中に消滅する可能性については明確に語っていた。
悪夢的なイメージばかり語ったのは、その最悪の事態を回避するためである。
■ユルゲン・ハーバーマス著 「人間の将来とバイオエシックス」
(2013年の記事)
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■ユルゲン・ハーバーマス著 「人間の将来とバイオエシックス」 その3
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