2019年03月11日17時17分掲載
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欧州
市民権の制限に乗り出したマクロン大統領 先月可決したフランスの「反暴動法」
マクロン大統領が率いる行政府と、国会で多数派を率いるこれまたマクロン大統領の率いる新党「共和国前進」の与党が、11月から続くマクロン政権に対する抗議運動「黄色いベスト」を封じるべく先月、「反暴動法」を制定した。法案の骨子は、現地の報道によると、自治体の首長か治安当局者が、ある運動参加者を公共の安全に対して危険な人物だと認めれば、その人物を強制的に運動から排除できるとする法律のようである。
これに対してフランス国内からも外国メディアからも市民権の不当な制限ではないか、とする批判的な報道が出ている。というのも、そのような市民権を制限をする力を首長や治安当局者のような行政当局者に認めたら、恣意的に権力を行使して、不当に反対運動や市民の表現の自由を制限することになりえるからだ。そもそも何をもって公共の安全に危険か、という基準を誰がどう決めるのか、ということが問われるだろう。この法の制定をもって、フランスの市民の自由が失われると嘆く声が出ている。
https://www.france24.com/en/video/20190205-french-parliament-vote-controversial-anti-riot-bill
前回、哲学者のパトリス・マニグリエ氏の「黄色いベスト」が持つ革命可能性に関する論を翻訳したばかりだが、マニグリエ氏がこれを書いてルモンドに送ったのが1月13日で、掲載されたのが2月下旬のことだった。その間にフランス国会ではこの反暴動法が制定されていた。まさにマニグリエ氏が書いていたような、革命の可能性を封じるための法律と言っても過言ではないだろう。放送局のフランス24などがこの反暴動法を報じる映像では、黄色いベストの暴力的なシーンがいくつも放映されていた。たとえばマクドナルドのガラスを割ったり、町の広告のためのポールのガラスを割ったりする「黄色いベスト」の映像である。
しかし、今、国連人権理事会ではフランス政府の機動隊が黄色いベストに対して過剰な暴力をふるっているのではないか、と調査に乗り出そうとしているのだ。とくにフラッシュボールと言うゴム弾が顔や足や目に当たって失明したり、重傷を負ったりする黄色いベストの参加者やジャーナリストが後を絶たず、各地の数字を足し合わせると100人を超える負傷者が出ているらしい。国連人権理事会のリーダーを務める国連人権高等弁務官のミシェル・バチェレ氏は、政権側と抗議運動参加者の双方に暴力の中止と討論をこれまで要請してきたが、最近、このフランス治安当局の過剰な暴力に関する調査も要請したと報じられた。
■「黄色いベスト」による革命の可能性 パトリス・マニグリエ(哲学者) Le potentiel revolutionnaire des gilets jaunes Patrice Maniglier
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