2019年03月27日02時51分掲載
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政治
野党完全勝利までの道のり 4 南田望洋
第二次安倍政権が誕生した最大の要因は東日本大震災でした。これは1000年に一度の災害で、政権を担っていた民主党にとっても不運な事態でした。当時、野党に沈んでいた自民党はこれを最大限利用しました。地震と津波が引き起こした人的損失、経済的損失に加えて、原発事故という原子力テクノロジーの崩落。この精神的外傷を自民党は最大限、民主党政権によって引き起こされたことだと刷り込んできました。その象徴的かつ魔法の言葉こそ「日本を取り戻す」でした。安倍首相の「日本を取り戻す」という言葉に見事に大衆は幻惑されました。強いリーダーがこの1000年に一度の国難を救ってくれる、と思ったのです。
しかし、これを笑ってはいけません。ドイツでも第一次大戦の敗北による巨額の賠償金に加えて1929年には世界恐慌が起き、ハイパーインフレを経験したドイツ国民は一致団結してドイツを取り戻そうと誓い、排外主義とレイシズムに傾斜します。しかし、ヒトラーの率いたナチスドイツは包囲され、1945年に敗北しました。このような悲劇が起きたのは次々と押し寄せる国難に対するドイツ人の防衛反応に起因すると思います。安倍政権の選挙での連勝もまた地震や原発事故といった惨事に対する日本国民の一種の防衛反応だと思われます。
歴史を顧みると、野党の課題はまず地震・津波・原発事故という惨事が民主党政権によって引き起こされたかのような印象を完全に払拭する必要があります。結局、この精神的な外傷によって、「野党には二度と任せてはいけない」という感覚が大衆に広まったのだと思われます。これを治療することが大切です。冗談ではなく、精神科医や社会心理学者の活躍が必要です。日本人の傷ついた心を治療することが大切です。戦争や差別、排外主義では日本の問題は解決できないことを言葉や行動で示していく必要があります。
現在の安倍政権はその歴史的文脈をたどれば冷戦終結以後の30年近い寒々しい歴史が腐葉土となっています。「一人は万人のために万人は一人のために」という言葉が残っていた時代が終わり、金さえあればなんだっていい、という風に価値観が転換した1980年代。しかしバブル経済が崩壊し、その反動で金がなければ命もない、という時代に反転しました。どれくらいの人がリストラされて、自殺したか、さらに自殺未遂も含めると100万人は超えるのではないでしょうか。こうした地獄と化した荒野に咲いた赤い花が小泉政権であり、安倍政権です。同じ職場で働いていても人間を正社員や派遣社員といった身分で差別しても誰も疑問を呈さなくなりました。職場で精神疾患者が増えるのも無理はありません。まず、人間性を取り戻すためには、このような社会や政治は異常だと認識することが第一歩です。
一方、これまで野党は言葉は立派で、論理は正しくても、情に乏しい、とか、温かさや思いやりにかける、と見られてきたことはないでしょうか。傷ついた心をどう癒すか。そのためには政治家だけでなく、精神科医や社会学者、建築家、都市学者、文学者や哲学者、農民や商人、芸人や医師など様々な分野の人々が本当にこの国を救うために知恵を出し、汗を流す、という課題の分かち合いが必要です。しょせん政治家だけでは問題の解決は無理です。簡単ではないと思いますが、何か小さくても自分でできる一歩を踏み出そうではありませんか。「日本を取り戻す」という言葉を安倍首相から取り戻すことが大切です。今、安倍首相のアベノミクスや外交の失敗によって日本は未曽有の国難にあります。これは天災ではなく、人災です。野党完全勝利には様々な分野の人々が日本の再生のために、手を携えることが必要なのです。
南田望洋
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