2019年05月01日13時06分掲載
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労働問題
コンビニのドミナント戦略を告発する
「ドミナント」――ちょっと聞きなれないカタカナ語である。日本語では「高密度多店舗出店」というのだそうだ。このドミナントがコンビニFC店舗の生殺与奪の権限を握っている。その実態が「労働情報誌」981号で暴かれている。「加盟店を『共食い』させるドミナントの恐怖」。(戸塚章介)
まずドミナントの解説。「ある地域内に集中的に出店して『知名度や配送効率』をアップする経営戦略だが、コンビニオーナーにとっては自分の店の近くに、同じチェーンの店が出店し客が奪われることを意味する」。具体的にはどんな状態になるのか。同誌はドミナントに遭った悲惨な実例を描く。
2010年、都内でセブンイレブン店をオープンしたSさん(60)。当初は経営好調で1日の売り上げが100万円を超えた。ところが14年2月、本部は道を隔てた向かいに新規店を開店させた。売り上げは半分に落ち込む。それで止めてくれるどころかドミナントはさらに続く。Sさんの店から200メートルの範囲に4店舗も乱立させた。売り上げ減少だけでなく、アルバイトも取り合いになる。
労働力補充と人件費節約のため奥さんや高校生の長男も店に入り、24時間営業を懸命に維持した。14年9月、深夜の長時間過重労働が原因で長男が自殺。「申し訳ないことをした」とSさんは悔やむ。そのSさんも心筋梗塞で倒れ、奥さんが近くのドラックストアで働いてアルバイトの時給に充てた。
セブン本部は売り上げが減って月150万円を割り込むと一定額を振り込まさせる。その振り込みのために1000万円あった貯金が5年で底をついた。カードローンにも手を出した。しかし本部は1円も手助けしてくれない。そして今年2月28日、本部はSさんに「3月いっぱいで閉店」と告げた。
ショックを受けたSさんは失踪して北海道をさ迷った。寒さで病気になり死ねば生命保険が下りると思ったからだ。幸い旭川警察署に保護され、東京に戻ってきた。Sさんはコンビニ加盟店ユニオンに相談し、その支援を受けてセブン本部の冷酷な仕打ちを社会に訴える活動を始めた。
コンビニ本部のドミナント戦略はFC店舗の営業権を侵害する違法行為である。Sさんの奥さんは「本部は親で加盟店は子なのに、一杯のご飯を子ども同士で取り合いさせる」と涙ながらに訴える。こんな冷酷商法で経営を拡大するコンビニ本部に産業としての未来があるはずはない。
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