2019年05月21日17時09分掲載  無料記事
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人権/反差別/司法

 裁判員制度10年の現状と改革の方向  根本行雄

 「国民の司法参加」を掲げた裁判員制度が5月21日、施行から10年を迎える。この間、約1万2千件が審理され、およそ9万人の市民が裁判に参加し、裁判員・補充裁判員に選ばれ、審理に携わってきた。この制度は「司法への国民参加」をキーワードに導入されたことになっているが、本来ならば、陪審制こそを採用すべきものであった。しかし、司法権力の保持者たちは既得権益を守り、治安維持を目的として、陪審制でもなく、参審制でもない、奇妙な「裁判員制」を作り出した。そのために、現在もなお、刑事司法の人権侵害状況は抜本的に改善されていない。 
 
 2001年6月、政府の司法制度改革審議会は、国民が裁判に関与する制度導入を盛り込んだ最終意見書をまとめた。これを受け、04年に裁判員法が成立し、09年5月21日に制度が開始した。最高裁によると、19年3月末までに計121万4033人が候補者に選ばれ、うち9万1342人が裁判員・補充裁判員に選任されて、1万2081人に裁判員裁判で判決が下された。 
 
 裁判員制度が5月21日、施行から10年を迎える。最高裁は5月15日、制度を検証した報告書を公表した。そして、「国民の理解と協力のもと、おおむね順調に運営されてきた」というコメントを述べている。 
 
 
□ 参加人数 
 
 裁判員は20歳以上の有権者から無作為に選ばれる。70歳以上▽学生・生徒▽重い病気や親族の介護、妊娠で裁判所に行けない−−などの場合は辞退が認められる。 
 
 最高裁によると、19年3月末までに計121万4033人が候補者に選ばれ、うち9万1342人が裁判員・補充裁判員に選任されて、1万2081人に裁判員裁判で判決が下された。 
 
□ 辞退率 
 
 現状では、一番、問題視されているのは、辞退率の増加である。 
 
 辞退は病気や妊娠、介護、重要な仕事で著しい損害が生じる場合など正当な理由があれば認められるが、審理日数の増加や関心の低下なども影響しているとみられている。報告書によると、辞退率は制度が始まった09年は53・1%だったが、12年に61・6%と6割を突破し、その後も上昇傾向が続いている。 
 
 裁判員候補者に選ばれながら辞退した人の割合は、増加傾向にある。09年は53・1%だったが、19年には68・4%(3月末現在)に上った。裁判員候補者が選任手続きに出席した割合も、83・9%から66・5%に低下している。 
 
 
 
 この背景にあるのは、裁判員制度は、裁判員の参加が一事件限りであるにもかかわらず、原則3人もの職業裁判官と協働させると いうシステムにすることで、市民を司法の一翼を担う「主権者」としてではなく、「お飾り」として扱ってしまっていることだ。それゆえに、司法権力の保持者たちは既得権益を守り、治安維持を目的として、陪審制でもなく、参審制でもない奇妙な「裁判員裁判制」を作り出した。そのために、現在もなお、刑事司法の人権侵害状況は抜本的に改善されていない。 
 
 □ 裁判員制度の改善 
 
これから進めていくべき刑事司法について簡略に述べておこう。 
 
別件逮捕の禁止 
 
代用監獄の廃止 
 
ミランダ・ルールの確立 
 
人質司法の根絶 → 早期保釈、拘留期間の欧米並み短縮 
 
弁護士の立ち合い権の保障 
 
 
 
事前の全面証拠開示の義務付け 
 
公判前整理手続きの改善 
 
被告人の選択権の保障 
 
直接主義、口頭主義の徹底 
 
 
 
被害者参加制度の廃止 
 
検察官上訴の禁止 
 
秘密漏示罪による懲役、罰金の廃止 
 
死刑制度の廃止 


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