2019年05月28日16時01分掲載
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コラム
おっぱいと戦争 マザコンと戦争の親和性を描くボリス・ヴィアンの戯曲があった 「将軍たちのおやつ」
ロシアが実効支配している国後島を日本の国会議員が訪ねて、そこで<戦争しないと島は取り戻せない・・・>的な発言をしたかと思うと、今度は「おっぱい」と叫んでいたという報道がそのあとに続いた。戦争とおっぱいにあまりにも隔たりがあるために、こうした報道を消費している人々はどう受け止めたらいいのか、混乱したのではないか。その議員はマザコンなのだろうか。だとしたら、マザコンと戦争は親和性があるのだろうか。そんなことを思っていると、以前紹介した戯曲のことが思い出された。フランスの作家、ボリス・ヴィアンの「将軍たちのおやつ」である。この荒唐無稽の作品の中で、ヴィアンはマザコンの将軍たちがママの手製のお菓子をほおばりながら、リビングルームで戦争の相手国を探すくだりを書いている。
■次の戦争をどこで起こすか〜ボリス・ヴィアン作「将軍たちのおやつ」〜
話題は次の戦争をどこで起こすか、だ。なぜ戦争をしなければならないか、といえば、政治家たちが失政を挽回し、国民の関心をそらすためである。さらに軍需産業からの要請でもある。そこで戦争しても必ず勝てる国を将軍たちは探し始める。間違ってもロシアとか、中国とか、アメリカのような核兵器を保有する大国とは戦争することができない。だから、世界で最も弱い国々の中から、どこがいいかとママのお手製のお菓子を食べながら、世界地図を広げて議論するのである。
フランスの作家・ジャズミュージシャン・作詞家・劇作家、ボリス・ヴィアン(Boris Vian; 1920-1959)の戯曲「将軍たちのおやつ」の一コマだ。
将軍たちは楽勝できる国を探そうと居間の新聞の紙面をめくる。ところが新聞には何も書かれていない、白紙が続くのである。全部のページが白紙になっている。新聞を検閲しすぎて記事がひとつもなくなってしまったのだ。情報統制が進みすぎて、将軍たち自身も世界情勢がさっぱりわからなくなってしまう。そのとき「ニュースがないのはいいニュースだ」と将軍のひとりが口にする。
■Le Gouter des Generaux(「将軍たちのおやつ」)
ヴィアンの戯曲「将軍たちのおやつ」の公演は近年も各地で行われている。
http://troupedusonge.free.fr/index.php/le-gouter-des-generaux
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