2019年05月30日15時12分掲載
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検証・メディア
何べんでも言うが、日韓請求権協定で「徴用工」問題は解決していない Bark at Illusions
韓国大法院(最高裁)が日本企業に元「徴用工」への賠償を命じた問題で、日本政府は韓国政府に対して第三国を交えた仲裁委員会を設置するよう要請した。日本政府は日韓請求権協定で問題は解決済みだと主張して韓国政府に問題解決の責任を押し付けているわけだが、個人による請求権は国家間の条約で消滅しない。しかも日韓請求権協定で日本政府が韓国側に対してとった措置は、被害者に対する賠償ではなく、経済協力だった。今問題になっているのは、日本の帝国時代に強制労働をさせられた被害者が未だに救済されていないということであり、問題解決の責任は、言うまでもなく、加害者側の日本政府と日本企業にある。
日刊ベリタ(18/11/7、19/1/16、他)で繰り返し述べてきた通り、日韓請求権協定で「徴用工」問題は解決していない。国家間の条約で個人による請求権を消滅させることはできないというのが国際的な共通認識であり、日韓請求権協定で個人の請求権が消滅していないことは、日本政府も外務大臣の河野太郎が昨年11月14日の衆議院外務委員会で認めている。また日韓請求権協定で日本政府が韓国に対して行った5億ドル分(無償3億ドル・有償2億ドル)の供与は、被害国側に対する賠償ではなく経済協力だった。それは日本の生産物と役務の供与という形で行われ──つまり日本企業に対する補助金という側面もある──韓国政府が自国の被害者救済のために使うなどという余地はなかった。
こんな基本的な事実を、日本政府やマスメディアが知らぬはずがない。それにもかかわらず、日本政府は韓国政府に賠償の肩代わりを要求したり、「個人の感情を優先するのではなくて……国際法違反という状況を速やかに是正」しろと韓国政府を非難したり(河野太郎、23日にフランス・パリで行われた日韓外相会談で)、「解決策を示すべきは……韓国側にある」と断言したり(菅義偉官房長官 15日の記者会見)……。マスメディアもこのような日本政府の姿勢を正すことなく、「徴用工」問題を理解する上で知っておかねばならない上述のような最も重要で基本的な事実を伝えることも怠って、日本政府と歩調を合わせ、例えば朝日新聞(19/5/22)社説のように「徴用工問題 韓国が態度を決めねば」などと韓国側に責任を押し付けている。
日本が加害国側だというのに、どういうつもりだろう。
こんなことがまかり通る日本社会でいいのか。
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