2019年05月30日22時58分掲載  無料記事
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"How Democracies Die " ( Steven Levitsky and Daniel Ziblatt ) 「いかに民主主義は死ぬか」(スティーブン・レビツキー&ダニエル・ジブラット著) 中野晃一教授(政治学)がNYTで言及した話題の書

  野党共闘を進めてきた市民連合のリーダーの一人、中野晃一教授(政治学、上智大学)は、今日付けのニューヨークタイムズに寄稿した文章”Why does Abe gush over Trump?" (なぜ安倍はトランプのことを話しまくるのか?)の中で、日本の政治が権威主義に向かっていることを指摘している。権威主義とは英語ではauthoritarianismであり、中国やロシアなど西側の民主主義国家群とは異なる政治体制を指す。安倍政権の下で日本も民主主義から権威主義体制に転換しつつあることが指摘されている。 
 
  中野教授は、その文章の中で、一冊の本を紹介している。"How Democracies Die " ( Steven Levitsky and Daniel Ziblatt ) 「いかに民主主義は死ぬか」(スティーブン・レビツキー&ダニエル・ジブラット著 2018年)である。死ぬデモクラシーが複数形になっている。本書の中で、トランプ政権の下で民主主義が崩壊していることが分析されているが、アメリカでもトランプ政権下で進行してきたということのようだ。著者はハーバード大学の教授たちである。 
 
  万一、数年後にアメリカが真正のファシズム国家になった時、同盟国である日本にどんな針路が可能なのか。ファシズム国家の軍隊の基地を日本国内に置いておくことは危険ではないか・・・そういう仮定はこれまではむしろフィクションの領域だった。たとえば作家、フィリップ・ロスの「プロット・アゲンスト・アメリカ もしもアメリカが…」である。これは1940年の米大統領選でルーズベルト大統領が再選を阻まれ、親ナチス派と言われたチャールズ・リンドバーグ(元飛行士)が共和党から出馬して大統領になった場合を想定した小説である。この空想小説ではリンドバーク大統領はナチスとの戦争を回避し、反ユダヤ主義がアメリカに浸透していくことになる。このような事態は現実には起きなかったが、この小説で書かれたことは、どこかトランプ大統領を生んだアメリカの現状と通底するものがある。というのは、もちろん、作家のロスが現在の米国に危機感を感じて筆を執ったであろうからだ。トランプ選出の場合もそうだが、民主主義国家が権威主義国家に転じていく理由は、経済構造にも関係しているのではなかろうか。 
 
 
 
■Steven Levitsky & Daniel Ziblatt, "How Democracies Die" 
https://www.youtube.com/watch?v=5v4NTtS2f5k&fbclid=IwAR0pvUaZ5he-wRJzkGsAHEJj0n573wwiUVBDd1KwzNlr_Fc78VkQPliSlKE 
 
■"How Democracies Die" with Daniel Ziblatt 
https://www.youtube.com/watch?v=LY0GFSLmyjg&fbclid=IwAR1uMAGbUIk6DGIOxX5iICe4BfrYeb5OCE219K1aDPGlBVPYItTJ6G0XZIk 


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