2019年06月22日12時06分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=201906221206446
政治
冷戦時代のイデオロギーから抜けられない安倍政権 世界の潮流の中で迷子に
安倍政権への国民の視線は日増しに厳しくなっている。決め手は年金の減額だが、それは長い一連の失政の終わりにあるというだけだ。池田内閣、田中内閣、大平内閣など戦後の自民党を支持してきたオールドファンから見ると、今の自民党は崩壊の淵にある。小泉首相から安倍首相にかけて、自民党は変質して、リアリズムを失い、柔軟な対応ができない党になった。さらに優れた人材が活用できないという問題が生じてきている。これが何を意味するかと言えば自民党が与党の蜜を吸えなくなった時、分裂する可能性があると言うことだ。
このように言える背景には現在の安倍政権の抱える問題がいずれも単なる偶然の失態ではなく、認識上の問題と構造的な理由を抱えていることによる。自民党支持者は自民党の未来を作るために以下のことを今、考える必要がある。
●安倍政権の抱える重大な認識のずれと構造問題
1)日本は冷戦時代の旧態依然とした米ソのイデオロギー外交を未だ続けている唯一の先進国である。がゆえに実態は多極化する世界の中で誤った外交を繰り返してきた。冷戦時代のイデオロギー外交などは米国ですら信じていない。その結果、理屈などなんであれ常にアメリカに跪く国、という風に世界から日本が見られている。対ロ、対北朝鮮、対中国、対イラン・・・いずれも成果は上がっていない。米国はすでに世界の警察官などではないし、実際にそれを実現できる思想の力も経済力も失っている。トランプ大統領はその象徴だが、その米大統領にしがみついていく安倍首相の姿がユーラシアの国々から疑問視されている。
2)経済の実態に沿わないアベノミクスの成功体験にしがみついて国民の多くの生活は劣化していることに気づいていない。安倍首相が国会でパートの話をしたときに、妻は月収25万、夫は50万円という設定で話をしたが、この設定自体が庶民の生活がわかっていない証拠だろう。国民の台所事情の分からない政治家に経済政策は無理だ。その結果、6年以上も経って国民の実質賃金は低下の一途をたどっている。安倍首相は経済学を正しく理解しているとは言い難い。悪意はないのだろうが、単純に経済音痴なんだろう。
3)ジャーナリズムに圧力をかけることで、報道の自由を奪い、正しい情報が政治家にも国民にも還流しなくなった。その結果、ソ連崩壊と同じ亡国の軌跡をたどっている。ジャーナリズムであるはずのメディア企業群が首相の夕食会に参加し、最高権力と不透明な関係を保っている。的確な情報がない国は亡びる。
4)官僚が国民ではなく、首相の顔色を見て仕事をしている。安倍政権で起きている一連のスキャンダルは内閣の中に官僚の人事を司る内閣人事局が安倍政権下で作られ、官僚たちの生殺与奪が内閣に握られてしまったことが大きい。その結果、行政の基本となる統計すら信頼性が下がり、国民の財産である公文書は恣意的に廃棄され、旧ソ連のような不透明で効率の悪い官僚機構を生み出している。
簡略に言えば外交、経済、報道、官僚機構に欠陥が目立っている。これらは構造問題であり、それらは互いに結びついて複合した国家の危機を形成している。だが国会で安倍首相はいかに野党に追及されても、柔軟に政策を転換することができない。安倍首相は国民を敵か味方かに二分する西部劇のガンマンのようなメンタリティなのだ。「和」という言葉とは無縁である。自民党支持者と国民が安倍政権を甘やかせ過ぎた結果、日本は真性の危機に陥っている。失政を認めず、野党議員の質問に関係のない話を一方的にべらべらしゃべり続ける安倍首相の姿を多くの国民は不快に思っている。放置しておくと自民党にとっても危機となるだろう。自民党という党の中に自由がなければ、日本国内に自由はないと思ってよい。自民党という党の中に多様性がなければ、日本国内にも多様性はないと思ってよい。現行の執行体制を排して、自民党を抜本的に改革することが日本再建の道となるだろう。
※安倍首相「妻がパート25万円とは言っていない」国会で民主党(当時)の山尾議員が安倍首相に質問。(2016年1月)
https://www.youtube.com/watch?v=ZWF3q0cl7NM
※安倍首相、妻がパートで働き始めたら「月収25万円」 例え話が波紋(ハフィントンポスト 2016年)
https://www.huffingtonpost.jp/2016/01/08/abe-part_n_8942104.html
※自民が野党攻撃本 下品な挿絵、メディア批判も
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190623-00010001-doshin-pol
南田望洋
■将来、自民党が下野した場合のNHKについて もとの軌道に戻すための道を考える時期に来た 〜NHK「非安倍化」検証委員会の設置を〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201906292326456
■庶民派を装うTV 〜 お前はただの現在などではない 〜
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201802251844540
■進化する機会を得た民進党 勝利して進化する機会を逸した自民党
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201710241640332
■枝野幸男・立憲民進党党首の演説「民主主義の主役は皆さんです。当たり前の社会を取り戻しましょうよ」
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201710141845266
■この期に及んでも「自民VS希望」の対決を売るマスメディア 最初に「踏み絵」を踏まされたのは報道各社
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201710050834154
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。