2019年07月17日05時45分掲載
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労働問題
介護労働者の地位向上を目指して〜共に生きられる社会に向けて〜
安倍政権により介護保険の改悪が行われたことで、介護等の業務に従事する人々が疲弊している。高齢化社会で介護の需要が高まる一方であるにも関わらず、介護従事者の地位向上は中々進まない。このような状況を変えるべく、6月末、東京都内において「今こそ 高齢者・しょうがいしゃ・介護労働者が共に生きられる社会へ」と題した集会が開催された。
〜「介護労働者の権利宣言」の実現に向けて〜
会場には、立ち見が出るほどの多くの参加者が集まり、皆真剣な眼差しで登壇者の言葉に耳を傾けた。集会前段では、介護労働者の権利確立を訴える「介護労働者の権利宣言」の草稿を作成した水野博達さんが講演を行った。水野さんは「日本の介護は、海外から見ると質が高いと言われるにも関わらず、政府は『介護は生産性がない』と主張している。国は、厚生労働省、財務省、経済産業省の都合ばかり優先して政策を進めており、現場のことが全くわかっていない」と、現政権による政策の方向性に異議を唱えた。また、「現在の介護業界は、効率的に仕事をしている人だけが評価される仕組みになっている。介護は共感労働であるから、小規模でもいいからケアワーカー同士が感性を共有できる場を作り、介護を受ける人々に寄り添うことができない今の制度に抵抗していかないといけない」と今後の活動方針に関する提言を行った。この意見に対し、会場内では大きく頷く参加者も見られた。
〜介護の現場を無視しないで〜
集会後段では、介護やしょうがいしゃケアの現場で働く人々が、自らの実体験について触れながら思いを述べた。介護福祉士の伊藤みどりさんは「日本は先進国であるにも関わらず女性の地位が低く、今の介護業界はそのような女性の犠牲の上に成り立っている。『命を支える』介護の仕事で効率ばかりが重視され、介護される人々に寄り添う余裕も持てない。これでは仕事にやりがいなど持てるはずがない」と強く訴えかけた。
また、「介護労働者の権利宣言」の草稿について、しょうがいしゃヘルパーの南守さんは「生活と労働に疲弊する介護労働者が難解な権利宣言を読み込むことは難しい。文章だけではなく共同で行う取り組みなどを通じて意識を共有し、処遇の改善を求めることが重要である」と今後の展望について語った。
さらに、ホームヘルパーの藤原るかさんは「介護の現場の状況をより多くの人に知ってもらって、国民的な合意を作りたい。安倍政権がひどいから選挙では介護の話題が出ないが、このまま介護の現場が無視されるような状況が続いてはいけない」と安倍政権の介護分野への無関心さに憤りの声を上げた。
「介護労働者の権利宣言」は介護労働者の組織化を図り、権利の確立を進めるものである。日本を支える介護業界の人々の声を無視して、現政権は明るい未来がつくれるのであろうか。(岩本裕之)
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