2019年07月19日02時51分掲載  無料記事
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コラム

戦争を一度始めたら終わらせるのが難しい  〜改憲を訴える政権与党に思う〜 

  自民党の安倍首相は憲法9条の改正を求めており、自民党は改憲を参院選の争点だとしています。ですから、もし自民党が勝利したら、「国民の支持を得た」とばかりに改憲論議を加速していくでしょう。このことを考えた時、今、一番思い出されるのがドキュメンタリー映画「日本国憲法」を監督したジャン・ユンカーマン氏の言葉です。それは戦争というものは始めるのは簡単でも、終わらせるのは非常に難しい、ということです。太平洋戦争でも日本軍は真珠湾に奇襲を行い、程よいところでアメリカと講和条約を結ぶことを考えていたと聞きますが、そんな都合よく外国が認めるはずがありません。4年後に原爆を2発落とされ、国土が焼け野原になっても無条件降伏を認めるまでは、終わらせてくれませんでした。 
 
  5年前、ユンカーマン氏は映画上映の後、こう語りました。 
 
 ユンカーマン「9条みたいな歯止めがなければ、戦争は簡単に始まるものなんです。でも、終わらせるのは大変ですよ。イラク戦争を始めて半年たったら戦争に意味がないことが判明しましたが、それから終わらせるまでに10年もかかったんです。その間に帰還兵の半分に当たる86万人が病院にかかっています。またPTSDは26万人に上っています。帰還兵の自殺率がとても高いのですが、その帰還兵を迎える家族もまた崩れているのです。」 
 
  今から5年前の段階で、ユンカーマン氏によると、帰還兵の自殺率はおよそ80分に1人。換算すると1日およそ18人、1か月で500人、1年で6000人になると言いました。これは米兵がイラクで戦死した数よりもはるかに多いのです。さらに、爆破で多数の傷を帯びた負傷兵は病院で寝たきりになったり、リハビリが非常に困難になったりするケースも多く、医療費も高騰していきました。 
 
  リーマンショック後にホワイトハウス入りしたオバマ大統領は、景気対策で大規模な財政出動をしなくてはなりませんでしたが、その傍ら巨額になった軍事予算を削減しなくてはならず、その解決策こそ自衛隊の実戦部隊化でした。2009年に誕生したオバマ政権(2009−2017)こそ、第二次安倍政権以後に力づくで制定された特定秘密保護法や安保法制など一連の制度改正の原動力でした。とにかく戦費を日本に負担させることがアメリカにとって最も肝心な点です。民主党のオバマ政権で当時国防長官だったロバート・ゲイツ長官は毎日のようにどうやったら軍事費を削れるか、頭を悩ませていたのです。議会では共和党議員たちから、財政赤字の上限を突き付けられ、米国は財政破綻寸前に陥っていました。そこで目を付けたのが日本の自衛隊だったのです。 
 
  もし日本が周辺のA国と戦争に突入した場合。話を単純化するために同盟国はここでは考えません。その場合、戦争が終わるにはいくつかのケースが考えられます。 
 
1)日本が降伏する 
 
2)日本人が絶滅する 
 
3)A 国が降伏する 
 
4) A 国民を絶滅させる 
 
5)講和条約を結んで戦争を終結させる 
 
  この中で日本人だけで決められるのは1と4の場合だけです。 
日本が降伏する場合か、戦争相手の国民を全滅させる場合だけです。もし敵が中国だとしたら中国人13億人を絶滅させたときです。自国民が絶滅するのも嫌ですが、戦争相手と言えど相手国民を絶滅させるのも辛いでしょう。 
 
  もしそうでなければ3の場合であれ5の場合であれ、相手国が戦争を終える意志が前提です。つまり、その解決策は相手国民の判断次第です。もし日中間で再び戦争が起きた場合、中国側は今回、どこまで戦争を続けようとするでしょうか?中国側は戦争終結の目途をどこに置くでしょうか。講和の条件に何を求めてくるでしょうか。第二次大戦の時のような寛容な処理で収まるでしょうか。いずれにしても戦争終結のカードを相手国が持つことになります。 
 
  あと1つ、残されたケースは日本人が絶滅する場合です。核攻撃を受ける場合もあるでしょうし、原発が50基以上もあればリスクは高まります。甚だしい事態を除くと、戦争終結は敵国の判断に依存するのですから、こんなことを考えたら最初から平和外交で解決を目指した方がよほどよいのです。 
 
  戦争がたとえ集団的自衛権の枠組みであったとしても、自衛隊の戦争参加を認めてしまった時に、戦争を好きな時に簡単にやめられるとは限りません。そんなことになったら消費税10%くらいではすみません。そのことを考えると、タカ派的な現政権で改憲はしない方が得策ではないでしょうか。冷戦時代なら米国が戦争終結まで面倒を見てくれたでしょうが、中国の大国化を含め多極化する現代では今後はいかに米国を含めた集団的自衛権の枠組みで戦争を始めても、TPPのケースに見られるように米国が自国の大統領の交代で、途中で米国だけ(講和を結んで)抜けてしまう恐れもあります。その場合は日本一国だけで最後まで処理することになるでしょう。 
 
 
 
■参院選の野党共闘の合意13項目の第1項目 〜憲法第9条「改定」への反対〜 戦争リスクの排除が家計底上げ政策を保証 
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=201907131934396 
 
■参院選に向けた市民連合と野党4党および1会派の政策合意内容は? 〜立憲主義に加え、最低賃金の目標「1500円」や報道の自由の徹底(放送の管轄を総務省から独立機関へ)税制の公平化など〜 
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