2019年07月31日22時13分掲載
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フランソワ・オゾン監督「彼は秘密の女ともだち (Une nouvelle amie)」 女装する男の探求
今年の参院選で女装する大学教授が登場したことは話題を呼んだだけでなく、日本社会で女装が認知されるきっかけになったような気がします。20年くらい前に女装を扱ったTVドキュメンタリー番組などでは、かなり特異な人間という扱いだった気がします。今日でも珍しい存在ではありますが、それでもその大学教授が出馬したことで、何かが変わったような印象を持ちました。
フランスで女装をテーマにした映画にフランソワ・オゾン監督による『彼は秘密の女ともだち』(2014年)があります。かつて怪盗ルパンを演じたフランスの人気男優、ロマン・デュリスが女装癖のある男性を演じています。この映画は筋書きが多少込み入っていますが、テーマは女性性を男性が憧れる、ということにあります。もともと女性性に憧れを抱いていた男性が結婚して赤ちゃんを持つ。結婚したことによって、彼は妻の女性性をただただ賛美することで女装癖は一時的に消えていたのです。しかし、その妻が若くして亡くなり、仕方なく赤ちゃんの哺乳を行っているとき、ふと妻の衣装を身に着けてしまう。泣き止まない赤ちゃんが安心すると思ったからだったのですが、それから彼は歯止めを失ったかのように、どんどん女装にのめり込んでしまう。
この映画のユニークさは、亡き妻に同性愛的な愛情を抱いていた女性がいて、亡き妻を挟んで妻を失った夫とその女性が三角関係になるところですが、これは映画を見ないとなかなか理解が難しいでしょう。それはともかく、『彼は秘密の女ともだち』という映画は、女装する男の内面に深く切り込んでいて、核にあるものが人間としての自由であることを示しています。
※trailer
https://www.youtube.com/watch?v=u3mEa5EpwjU
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