2019年08月04日12時24分掲載
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社会
京アニの35人の死者を自己の欲望のために利用した脅迫犯人の逮捕を あいちトリエンナーレ「表現の不自由展・その後」中止で
あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」で「平和の少女像」の展示に対して、脅迫のFAXを送った人物がいたことが展示中止の1つの要因として挙げられています。それが展示中止の本当の理由だったかどうかは議論の余地がありますが、それはともかく、この件が中止の主たる理由として主催者側から発表されていることは由々しき事態です。
日本国憲法の保障する表現の自由に対して挑戦した脅迫犯人の逮捕を愛知県警は急いでする必要があります。もし逮捕できなければ愛知県警に対する市民の見方は変わっていくでしょう。この脅迫犯人は京都アニメーションの放火事件で亡くなった35人の死者を自己の欲望のために都合よく利用しています。もし展示物を撤去しなかったら、同様の事を起こす、という表現の場に集まっている人々を大量殺人する意志の表示があいちトリエンナーレ事務局に送られたFAXにはあると思われるからです。今後も同じことを起こし得る可能性のある犯人を放置しておいて法治国家と言えるでしょうか。否、脅迫したい放題の放置国家でしかありません。
フランスでは2015年1月7日に風刺漫画誌「シャルリ・エブド」編集部が襲撃され漫画家たちが殺された時、400万人近い人々が「私はシャルリ」(JE SUIS CHARLIE) と書かれたプラカードを手に抗議の意思を示しました。それらの人々は必ずしも「シャルリ・エブド」が好きな人々というわけではなかったのです。むしろ、悪趣味だと思っている人々も少なくありませんでした。それでもたとえ議論を呼ぶ作品であったとしても、それを暴力で表現の中止に追い込んでいいわけがありません。ましてや作者を殺すなどは論外です。表現というものをどのくらい大切にするか、今、その意思が問われています。というのもこの殺人の脅迫には政治的な意図が垣間見えるからです。それは改憲派が日本国憲法の「表現の自由」(憲法21条)に対して「公益に反しないかぎりにおいて」(▲)というような留保を付け足そうとしていることと通底すると思われるからです。議論の余地のない、誰が見ても賛成できる作品しか公共の場で展示できなくしよう、という政治的な意図があるのです。そのことは公共の電波、つまり放送局のあり方にも関係しています。
▲自民党憲法改正案 表現の自由を制限する21条2項
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「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社することは、認められない。」という2項の但し書きは国家公安当局が「公益」とか「公の秩序」をどう解釈するかで大きく変わってくるところで、政治的な意図や判断が加わる余地の高い条文です。」
※シャルリエブドの風刺画については日本で論じられているものは現地の事情を知らない一方的なものが多いと思われます。日本ではヘイト漫画家が殺されるのは無理もない、という声もありました。作品の意味を考えることもなく、一方的に意味を決めつけて暴力を容認するような発言は表現の自由に対する攻撃です。フランス在住のブロガーであるRyoka氏の以下の文章にフランスにおける論考が紹介されています。
■イタリア人の映画監督がイタリア中部アマトリーチェ地震の被災者らをパスタにたとえた風刺画を読み解く 〜母に捧げる風刺画の読み方〜 Francesco Mazza(翻訳 Ryoka)
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■シャルリー・エブドは難民を馬鹿にしているのではない Ryoka (在仏ブロガー)
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■拝啓 宮崎駿 様 〜風刺画について〜
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■シャルリー・エブドのシリア難民を扱った風刺画について 〜批判に対する作者RISSの反論〜
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