2019年08月04日15時45分掲載
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検証・メディア
「平和の少女像」撤去の背後にある不気味な憎悪感情 公共の電波で韓国ヘイトを振りまく弁護士さんもいる
国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の「表現の不自由展・その後」に出品されていた「平和の少女像」が撤去された。その背後に猛烈な抗議の電話やメールがあり、極めつけは「ガソリン携行缶を持ってお邪魔するというファクス」だったと報じられている。この推移を追いながら考えたのは、8月2日のTBSの昼のニュースショウ「ひるおび!」での常連コメンテーターの発言だった。(大野和興)
同番組で、日本政府が韓国に貿易規制を仕掛けた事案に関連して、政治ジャーナリストの田崎史郎氏が「韓国人は日本人と違い感情的ですぐ頭に血がのぼる」という意味のことを述べ、続いて弁護士である八代英輝氏が米国が仲介に乗り出したというロイター電をもとに記事を掲載した朝日新聞と韓国のハンギョレ新聞や中央日報を指して「反日三羽ガラス」と決めつけた。
公共の電波を使い、韓国ヘイトが公然と声高に展開され、誰もそれをとがめない、そんな空気が日本の代表的なテレビメディアに充満している。これでは「韓国に対しては何を言ってもよい」と人々が思い込んでも仕方ない。そんな空気が先日のガソリン携行缶と使っての大量殺人を示唆する抗議ファックスを生んだのだろう。
いったい何があったのか。大村秀章・愛知県知事の3日夕の記者会見を報じた朝日新聞電子版8月4日から追ってみた。
大村知事は記者会見で 「テロ予告や脅迫の電話などもあり、撤去しなければガソリン携行缶を持ってお邪魔するというファクスもあった」ことを明らかにした。開幕した今月1日だけで抗議は電話200件、メール500件。事務局の電話回線はパンクした。2日朝には知事が例に挙げたファクスが届いた。事務局は抗議電話に対しては意見を聴く姿勢で、職員も増強したが、電話やメールは県庁にも寄せられた。対応に忙殺され、芸術祭の運営そのものに支障を来しかねないところまで追い込まれたという。
同じく3日夕に記者会見した芸術監督を務める津田大介氏(ジャーナリスト)も「続ける選択肢もあったが、現場の複数の人から『もう無理だ』という声が上がっていた。現場が『地獄の日々が待っているんじゃないか』と思う選択肢は取れなかった」と説明した。 ベテランの愛知県職員らが電話に応対したものの、待たされた人がオペレーターに激高するなど抗議が過熱したという。職員の個人名をインターネットにあげてさらす事例もあり、津田氏は「この光景を見て続けられないと思った」。
抗議者の中には意識的な嫌韓派ももちろんいたはずだが、普通の市民もたくさんいたのではないかと思う。その人たちがこれだけ居丈高になり、それが当然だと思い込むにはそれなりの背景がある。いまこの国を覆う“韓国叩き”の空気だ。もともとは安倍政権が煽り続けてきたことだが、韓国への経済的報復が現実に実施されたこの頃、テレビを中心に「日本は正しい、悪いのは韓国」という言説が振りまかれた。
その典型が冒頭で紹介した「ひるおび!」の顛末だろう。この部分を報じたYAHOOニュースやYOUTUBEの投稿欄には八代賛辞が溢れた。
弁護士の八代さん、どんなお気持ちでしょしょうか。あなたにとって人権とはなにか、機会がありましたら、教えてください。
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