2019年08月11日08時01分掲載
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コラム
NHK局員が安倍政権支配とうまくやれるワケ
過去には戦時中の加害を含めてジャーナリズム作品を多数放送してきたNHKがなぜ安倍政権による支配を唯々諾々と受け入れているか不思議に思う人も少なくないだろう。しかし、それには理由があるのだ。
NHK局内を見ればわかるようにNHKで放送されている番組のかなりはプロダクションに外注しているし、局内でもかなりのスタッフが派遣社員として働いている。NHK−NHKエンタープライズなどの外郭団体-番組制作プロダクション、というヒエラルキーがある。そしてそれぞれの中にも局員と派遣スタッフという区別がある。NHK局員はそうしたヒエラルキー構造のトップに位置し、安価で外部の人間を使い倒せる立場にある。大手自動車メーカーが様々なレベルの下請け企業を抱えているのと同様だ。だがNHKの場合は民間企業よりももっと閉鎖社会だけに、パワハラも多いのではなかろうか。派遣されて差別構造の中でノイローゼになった人間はいつでも取り替えがきく。実際、派遣されて差別構造の中で働くうちにノイローゼになって元の制作会社を退職する人もいるのだ。ストレスとパワハラで疲労がたまり、意識を失って線路に落ちている人までいる。無理目な要求を出すプロデューサーにディレクターが異を唱えたら、「あの人物を降ろせ」とすぐに制作会社に圧力をかけたプロデューサーもいる。自分の身の回り5メートルの問題に目を背けてきたこうした人々が社会問題を本当に扱えるだろうか。
NHK局員が派遣労働問題をまともに考えようと思ったら、まず自分の職場の矛盾に行き着いてしまう。NHK局員が経済の問題を考えようと思ったらまず自分の職場の矛盾に行き着いてしまう。NHK局員がジャーナリズムの倫理を考えようと思ったら、否応なく自分の職場の矛盾に行き着いてしまう。だからこうした問題を見て見ぬふりをして10年もそこで過ごせば、最初はやる気に満ちた優れた若者たちだったとしてもいずれみんなミイラのような中年男女になってもおかしくない。
こうしてみると、NHKは今の日本の差別社会の縮図である。何一つ自分たちの内側からそうした構造を変えようと言う声はない(と思う)。というよりか、彼らの立場は安倍政権やそれを支える経団連の立場と基本的に変わりがない。今の局員には自分自身を顧みることのできる人間はほとんどいないと言えよう。理屈にこだわる彼らだが、その理屈を状況や身分に応じて使い分けているのだ。だからそこにはカント的な普遍的な理性などはない。これは日本の「エリート」に遍く存在する欠陥である。日本にはエリートなどはいないのだ。上司の意見を金太郎飴のようにまき散らしている人間ばかりだ。だからこそ、NHKは改革されなくてはならない。民衆のために番組を作らない公共放送局は不要だ。
武者小路龍児
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