2019年08月17日20時53分掲載
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コラム
NHKはインテグリティ(integrity)が欠落していないか? 城下町の出入り業者たちも
毎年、8月の敗戦記念日が近くなるとNHKでは戦争に関する特集を放送し、高い評価を受けてきました。広島放送局が送る原爆の歴史とか、今年であれば戦前の右翼新聞のこととか。これらは多くの人が高い評価をつけており、それ自体はその通りなのです。しかしながら、これは74年以上前の史実であります。確かに歴史の真実を見つめる大切さは言うまでもありません。とは言え、NHKは現在の政治や経済に関しては手薄である、というより、むしろサボタージュしていると言った方がよいように思えるのです。
安倍政権は戦後民主主義のレジームを否定してもとに戻すことを信条にしてきた政治家です。そのことがNHKが毎年、夏に放送している戦争の罪とどう関係してくるのか、ということが大切に思われます。NHKの現在の政治報道は安倍政権の言うがまま、と言ってもおかしくない程劣化しています。
欧米ではこうした場合にしばしば「あの人にはインテグリティ(integrity)がない」などと言います。英単語のインテグリティには誠実さ、という意味もありますが、全体が分裂せず統合されているという意味でもあります。英語圏でインテグリティがあるかないかは、人の評価の大きな分かれ目です。たとえば、言動が時と場所でバラバラな人はインテグリティがない人として低い評価を下されます。その人の言動に一貫性がないことを意味します。その時々ですぐにばれる嘘を繰り返しつく政治家はインテグリティがないと評価されます。選挙戦の時などでは候補者たちは、しばしばその言動が過去に遡ってチェックされます。政治家でなかった時代の言動までチェックされるのです。そして、言動に一貫性がある人は誠実だと受け止められ、「あの人物はインテグリティがある」と評価されます。思想は何であれ、言動に一貫性があることは人間の誠実さの基盤だということだと思います。
NHKについて言えば、NHKは8月に歴史ものとして戦争の責任を追及する番組は作る。しかし、戦争を賛美する政治家たちの言動に無批判に追随して報道することは、まさにインテグリティが欠落していることです。欧米では非常に評価が低いことなのです。日本人はインテグリティという価値に鈍い傾向があります。だから、夏にNHKの素晴らしい番組を1本か2本見たら、「やっぱりNHKは最高だな」と思ってしまうのです。その背後で何本の現代を描こうとする番組企画が没にされているか想像すらしないままに・・・。さらに、かつて放送がもっと自由にできた時代に言論の自由をテーマにした番組を作ってきた人々が、一番その価値が大切になっている今、そこから目をそらし、沈黙しているとしたら、それもインテグリティの欠落です。
武者小路龍児
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